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【正論】グルジア危機 ロシアの行動の本質的な意味 日本国際フォーラム理事長・伊藤憲一 (1/3ページ)
今回のロシア・グルジア紛争について「その原因はNATO(北大西洋条約機構)の東方拡大にあり、ロシアの行動は勢力圏防衛のため必要だった」、あるいは「民族自決原則と内政不干渉原則の優先順位を決められない国際社会にも責任がある」などと述べて、ロシアの行動を正当化しようとする主張があるが、私は同意できない。
NATOの東方拡大について言えば、それを求めたのはかつてロシアの抑圧に呻吟(しんぎん)した中東欧諸国であり、NATO側ではない。ルーマニアのNATO加盟実現のため奔走した同国のパシュク前国防相は「これでルーマニアは歴史上初めて真の安全保障を得た」と、私にその安堵(あんど)感を漏らしていた。中東欧諸国がどこの国と同盟するかは、これら諸国の主権的決定事項であり、ロシアの指図すべきことではない。「勢力圏」という発想自体が、もはや受け入れられない。
民族自決と内政不干渉の両原則の優先順位という問題はあるが、だからといって、今回のロシアの行動が正当化されるものではない。今回の事件の本質的な意味は、別のところにあるからである。
「暴力」依存の権力基盤
実は私は今回のロシアの行動を予想していた。帝政時代から旧ソ連時代を通じて一貫するロシア国家の本質を「力治国家」ととらえる私は、プーチン前政権のこの本質への回帰の危険性を感知していたからである。プーチン政権発足直後の2000年8月にロシアを訪ねた私は「プーチン大統領は今後10年、20年の長期にわたり新生ロシアの建設を指導することになり、ピョートル大帝やスターリンに匹敵するロシア史上の建設者としての位置を占めることになろう」(『諸君!』)と予言した。この予言はその後ピタリと的中したが、その根拠は、プーチンが「暴力」依存の権力基盤を構築しつつあり、それがロシアの伝統的な政治文化である「力治国家」体制に適合すると判断したからであった。

