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【主張】カラジッチ裁判 真相を究明し民族和解を

2008.8.18 03:05
このニュースのトピックス主張

 20万人以上の犠牲を出したボスニア・ヘルツェゴビナ紛争の戦犯として起訴されたセルビア人指導者、ラドバン・カラジッチ被告の裁判が旧ユーゴスラビア国際戦犯法廷で始まった。

 カラジッチ被告は1992〜95年に起きたボスニア内戦でセルビア人共和国大統領を務めるなど、過激な民族主義勢力の指導者として権勢をふるった。とくに95年7月、スレブレニツァで起きたイスラム系住民約8000人の虐殺事件を含めて大量殺人(ジェノサイド)、人道に対する罪など11件の罪状に問われている。

 国連決議で設置された同戦犯法廷に起訴されたものの、96年に大統領を辞任して姿を消し、7月下旬、セルビア政府に拘束されるまで13年間の逃亡生活を送った。セルビア人の間では、今も「民族の英雄」とする空気がある。

 旧ユーゴ戦犯法廷ではこれまでに161人が訴追され、56人が有罪となった。しかし、最大の戦犯とされたミロシェビッチ被告(新ユーゴ大統領)が裁判中に病死したこともあって、欧州で「第二次大戦後最悪の民族紛争」と呼ばれた内戦当時の真相は今も完全には解明されていない。

 とりわけ多くの犠牲を生んだボスニアでは、他民族や異教徒を大量粛清する「民族浄化」という凄惨(せいさん)な言葉まで生まれた。民族間の対立感情は、その後もコソボなどに舞台を広げて各地でくすぶっているのが実情だ。

 民族浄化思想は、クロアチア人勢力などの間にもあったとされるだけに、カラジッチ被告らの裁判を通じて冷静に真実を解明することが必要だ。その上で、過去の過ちを二度と繰り返さないように、各国が民族和解の政治に取り組まなければならない。

 セルビアでは従来の民族主義政権に代わって、欧州連合(EU)加盟をめざすツベトコビッチ新政権が誕生したことが、カラジッチ被告拘束のきっかけとなった。EUの静かな説得が功を奏した形だが、同国の民族主義者らの間には新政権のEU協調路線に強い不満もあり、懸念が残されている。

 だがセルビアに限らず、過去を向いた偏狭な民族主義に未来はない。セルビア政府には国民をさらに説得し、EUや国連など関係当局とも協力して公正な裁判に協力するよう望みたい。それが犠牲者らへの責務であり、バルカンの平和と安定を確立する道だ。

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