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【主張】中国の「禁書」 五輪開催国にそぐわない

2008.3.17 03:43
このニュースのトピックス主張

 日本で刊行された書籍が中国の税関で差し止められ、日本に返送される事態がこのところ2件続いた。いずれも、中国の国内法令違反を理由にしている。北京五輪をひかえたこの時期に、言論・出版の自由に対する中国当局の硬直化した姿勢がまた表面化したといえる。非常に残念である。

 上海の日本人学校が取り寄せた地理関係図書と、産経新聞が連載した「トウ小平秘録」をまとめた同名の単行本上巻(産経新聞出版発行、扶桑社発売)である。「トウ小平秘録」の方は、産経新聞社が関係者への寄贈用に送った50冊が日本に送り返され、4月刊行予定の下巻も同様に禁輸になるという。

 「トウ小平秘録」は、激しい権力抗争を生き抜いたトウ小平氏(1904〜97年)の軌跡を追跡したものだ。トウ氏を今日の中国発展の最大功労者と位置づける一方で、民主化を求める市民らを武力弾圧した天安門事件(89年6月)についても、当然論及している。

 返送措置をとった北京税関が根拠とした「税関総署令」には「中国共産党を攻撃し、中華人民共和国を誹謗(ひぼう)した刊行物は持ち込めない」とある。したがって、天安門事件の処置はトウ氏の誤りとする「秘録」は、禁輸に該当するというわけだ。

 地理関係図書は、「尖閣諸島を日本の領土としている内容」が問題視された。上海市政府は「中国領土の完全性を損なう出版物は許可しない」とする出版管理条例違反を根拠にあげる。

 いずれも、過度の自己中心主義といわざるをえない。尖閣諸島は明治28(1895)年、日本政府が日本の領土として閣議決定のうえ国際公告し、その後どの国からもクレームがつかなかった。中国が領有権を主張し始めたのは、近くに石油埋蔵の可能性が浮上した70年代初めから−という経緯がある。地理関係図書も、中国側が目くじらを立てるほど日本側の主張を声高に強調した内容ではない。

 民主主義国家なら、自国に都合が悪いことが書かれているとの理由で禁輸にすることはしない。外国で出版され、しかも限られた空間やわずかな部数しか流布しない出版物にも独裁的な国内法令をあてはめる姿勢は孤立を招く。国際基準を旨とする五輪の開催国にふさわしい柔軟な対応を望む。

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