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【産経抄】8月8日
このニュースのトピックス:動物園・水族館
「オリンピックを呪(のろ)い、日本の大衆の健康さに耐えられなくなった私は、オリンピックの期間は大阪に〈疎開〉をし、上野動物園やら日本橋やらへ足を向ける、当時の雰囲気からみれば〈非国民〉的、〈反動〉的、よくいえば反時代的な生活態度に変ってゆく」。
▼作家の小林信彦さんは、昭和39(1964)年を、こんなふうに過ごしていた(『私説東京繁昌(はんじょう)記』ちくま文庫)。新幹線と首都高が姿を現し、都電が消えた。日本橋で生まれ育ち、青山、六本木で青春時代を送った小林さんは、東京の変貌(へんぼう)を「町殺し」と呼んだ。
▼今なら共感する人が少なくないだろう。五輪によって東京が、そして日本人が多くのものを失った。日本橋の上に首都高がかぶさっているのは、けしからんとの声もある。だからといって、日本人に大きな自信を与えた五輪の功績を否定する人は、ほとんどいないはずだ。
▼北京五輪に向けた建設ラッシュもすさまじかったらしい。その「町殺し」によって、多くの古い町並みが破壊された。テロを警戒したものものしい警備、横断幕の大きさまで厳しく規制された応援席、自由にインターネット接続できないプレスセンター。本番が近づくと今度は、「平和とスポーツの祭典」の建前とはほど遠い、強権的な運営が、世界を驚かせている。
▼44年前の10月10日、前日までの雨がうそのような秋晴れとなった。「世界中の青空を全部東京に持ってきてしまったような、すばらしい秋日和でございます」。開会式を伝えるNHKの北出清五郎アナの名調子が忘れられない。
▼きょうの開会式を、中国の人たちはどのように記憶するのだろう。いい五輪だったと、何十年か先に振り返ることができたらいいのだが。