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【ドラマ・企業攻防】日本メーカーの“甘さ”露呈したスピード水着問題 (1/2ページ)

2008.6.21 15:16
このニュースのトピックスドラマ・企業攻防
競泳ジャパンオープン2008の女子200メートル自由形・決勝。スピード社の水着がずらり=6月6日(奈須稔撮影)競泳ジャパンオープン2008の女子200メートル自由形・決勝。スピード社の水着がずらり=6月6日(奈須稔撮影)

 世界記録を連発し、「競泳の歴史」というよりも、「競泳水着の歴史」を塗り替えた英スピード社製レーザー・レーサー(LR)問題。日本水泳連盟が、ミズノ、アシックス、デサントの国内3社との契約を覆して日本代表選手もLRを着られるようにしたことで、日本中が注目した騒動は一応決着した。だが、ハイテクを誇ったニッポン製造業の惨めな“敗北”に、後味の悪さは否めない。極薄水着のLR騒動から透けて見えたのは、技術偏重・情報軽視という日本企業特有の弱さや、競泳界と国内メーカーという狭いムラ社会にみえる甘えの構造だった。

ミズノの動揺

 今回とりわけ苦い思いをしたのが、日本のエース・北島康介選手と契約するミズノだろう。ミズノの受けたショックは、他の2社とは比較にならない。それは、「誤算」が重なる悲劇のドラマでもあった。

 スピード社との42年に及ぶ共同開発契約を打ち切り、自社ブランドで世界に打って出た矢先のLR騒動。「スピード社の歴史的水着と評される『シャークスキン』は、ミズノの技術というのがもっぱらの見方」(大手スポーツメーカー)。スポーツ用品業界でも、ミズノのつまずきは想定外だったようだ。

 北島選手との契約金額は明らかでないが、年間5000万〜6000万円とも言われ、競泳に関する用具はすべて無料で提供。前回五輪直後から4年の歳月をかけ、ミズノは水着の開発に専念した。すべては世界200カ国で放映される北京五輪で、「MIZUNO」のロゴを付けた選手が登場する日のためだった。

 スターである北島選手とのスポンサー契約を結ぶミズノは、6月10日の日本水連による解禁直前まで、契約選手のLR着用に否定的だった。解禁前に水野明人社長が報道陣に囲まれた話がもとで「ミズノ、契約選手のLR着用容認へ」と報じられても、現場の担当者は「社長はサービス精神が旺盛だから。言葉尻を捉えられただけ」と真に受けず、火消しに走ったほど。

誤算の起点

 ミズノの誤算は、どこから始まったのか。

 昨年6月1日、ミズノは自社ブランドの競泳用水着「アクセルスーツ」を発表した。陸上選手用スーツなどで実績を積む三次元仕立て技術を初めて水着に採用、動きやすさとフィット感を両立した技術を水着に応用したものだ。北島康介選手は発表会の舞台で、「着心地は最高。世界一の水着だと、僕からも発信できるようがんばりたい」と話し、報道陣の求めるまま愛きょうを振りまいた。

 ミズノは1920年代から水着を生産しているが、65年からはライセンス契約を結んだスピードのブランドで、同社と共同開発した水着を国内販売してきた。日本の競泳選手が、ミズノのロゴ入り水着で五輪に挑んだのは72年のメキシコ五輪が最後となる。

 ミズノは近年、自社ブランドによる世界事業展開に方針を転換。他の製品と同様、水泳関連商品でもライセンス契約を切った。発表会見の後で水野社長は「やっとスピードとの契約を打ち切ることができた」と、満面の笑みを浮かべた。それは「スピード何するものぞ」と、勝算を胸に秘めた余裕の表情ともいえた。

 技術力をバックに世界で躍進を期したミズノだが、長年のパートナーの力を甘く見たのか、情報戦で重大な遅れを取った。

 すでにスピード社は3年前から、国際水泳連盟(FINA)の規定に抵触しかねない次世代水着・LRの開発を極秘裏に進めていたからだ。

このニュースの写真

競泳ジャパンオープン2008の女子200メートル自由形・決勝。スピード社の水着がずらり=6月6日(奈須稔撮影)
水泳ジャパンオープンの男子200m平泳ぎ予選。スピード社のレーザー・レーサーを着用する北島康介=東京辰巳国際水泳場(浅野直哉)
スピード社の水着「レーザー・レーサー」の発表会見でポーズをとるマイケル・フェルプス=2月、ニューヨーク(AP)
競泳ジャパンOP女子100メートル自由形決勝では全選手が英スピード社製の「高速水着」レーザー・レーサーを着て臨んだ=7日、東京辰巳国際水泳場
スピード社の開発責任者ジェイソン・ランス氏
高速と引きかえに、すぐにやぶれちゃう!? 伊藤は4度着用しただけで、ビリビリ…
女子50メートルバタフライ決勝で、スピード社製水着を着て日本新記録をマークし、声援に応える加藤ゆか=東京辰巳国際水泳場
男子400メートル自由形決勝でスピード社製の全身水着を着用、日本新記録で優勝した松田丈志=東京辰巳国際水泳場
競泳ジャパン・オープンの男子200メートルバタフライ決勝に、スピード社製水着で臨む松田丈志選手=6日、東京辰巳国際水泳場
金メダルの期待がかかる北島康介
男子50メートル平泳ぎ決勝にスピード社製の全身水着で臨んだ北島康介=東京辰巳国際水泳場
女子100メートル自由形・決勝 8人全員が、英スピード社の水着。会場からはどよめきがおこった 
スピード社の水着で日本新をマークして優勝した北島康介(撮影・奈須稔)
スピード社製水着でレースに臨む中西悠子=ローマ(共同)
スピード社製水着でレースに臨む伊藤華英=ローマ(共同)
男子100メートル背泳ぎ予選に英スピード社の水着を着て出場した宮下純一=東京辰巳国際水泳場
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