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【産経抄】9月14日
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「しくじる」というのは普通何かを失敗する意味である。だがもうひとつ、過失で勤め先を解雇される、あるいは取引先を出入り禁止になるというときにも使われてきた。特に落語や歌舞伎など師弟関係の厳しい世界では「破門」である。
▼例えば「黒門町をしくじる」と言えば、黒門町の名人、八代目桂文楽師匠に破門されることだった。それほど「破門」は日常茶飯事だったのだ。永六輔さんの『藝 その世界』によれば、洋食を24皿食えると自慢したのに10皿ほどでダウンして、すぐ破門された弟子もいるという。
▼また、文楽人形遣いの吉田徳蔵は、芸がまずいといって息子を勘当してしまった。これも一種の破門だが、息子は当時14歳だったという。そこまでいくともう芸人の「奇行」かもしれない。だが芸を学ぶことの厳しさを示したエピソードであることは間違いない。
▼その点、やはり師弟関係で成り立つ大相撲で「破門」というのをあまり聞かないのはどうしてだろう。大麻事件など一連の不祥事でも、相撲協会が力士を処分、親方がその責任をとらされる処理の仕方だ。親方は弟子を破門するどころか、かばってばかりの印象がある。
▼何でもかんでも破門すればよいというのではない。道を踏み外すようなことをすればすぐ破門する。そうなれば土俵に上がれないぞ。と、師匠たるもの、そのぐらいの厳しさで弟子に接すべきだ。それなら、わがまま放題の横綱も生まれなかった気がする。
▼とはいえ、学校でも職場でも教える者と教わる者との「友達化」が進んでいる。師が自信をなくしたのか、弟子がしくじっても、別の世界で生きていけるという社会の変化のせいなのか。「破門」という言葉も、死語になりつつあるようだ。