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【話の肖像画】柔の道(3)東海大教授・山下泰裕さん (1/2ページ)
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■「無」の状態で臨めたロス五輪
−−1984年のロス五輪柔道無差別級決勝戦。それまで「勝ち負け」にこだわってきた山下さんが、このとき初めて「無」の状態で試合に臨むことができたそうですね
山下 (2回戦でけがをして)正直、どうやったら勝てるのか、分からなかったのです。戦い方が見えなかったから、作戦を考える余裕なんてありません。心を「無」にするしかなかったのです。決勝戦は、あの状態で最善を尽くすことができた、と思っています。
−−そうして獲得した金メダル。世界中に感動を呼びました
山下 それは、けがをしたからでしょうね。もし、そうでなかったら、私の優勝なんて1年後にはみんな忘れていますよ(笑い)。何が幸いするか、分からないものです。でもあのとき、日本に帰って“熱狂ぶり”を見ながら、実は怖くて震えていたのです。
−−怖くて?
山下 決勝戦は本当に「紙一重」の差で勝つことができました。でも、もし負けていたら、どうなっていただろう?と考えると怖くなったのです。みんなが騒げば、騒ぐほど、そうした考えに取りつかれました。私はそんなことを考えてしまう人間なんですよ。だから一瞬たりとも気を抜いてはいけない。常に最善を尽くさねばならないんだ、と改めて思いました。

