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【特報 追う】世界“無形文化”遺産って? 東北から3件、伝承の励みに
伝統芸能などの無形文化財の保護を目的に、国連教育科学文化機関(ユネスコ)が「世界の代表的な無形文化遺産」のリストを来年作成することを受け、文化庁は7月、日本からの登録第1弾となる目録14件を発表した。東北では岩手、宮城、秋田3県から1件ずつ選定された。世界的な知名度の向上が見込まれることもあり、「観光客誘致に繋がる」、「伝承の励みになる」と期待する人々もいる一方で、「どんな効果が出るのか予測できない」と戸惑いを感じる関係者もいるようだ。(小野田雄一)
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「岩手・宮城内陸地震や平泉の世界遺産への登録延期など、暗いニュースが続いた中、明るい話題が出てよかった」
岩手県教育委員会の中村英俊文化財・世界遺産担当課長はこう感想を述べた。
同県からは、厄除けや五穀豊穣(ほうじょう)を願う歌舞「早池峰(はやちね)神楽」(花巻市)が選ばれた。
中村課長は「今回の選定で、早池峰神楽が日本を代表する神楽となれば、観光客増加に結びつくかもしれない」と期待を寄せる。
こうした期待は、「秋保の田植踊」が選ばれた仙台市でも同様だ。同市教育委員会の担当者は「喜ばしいこと。この機会を観光面などに生かせれば」と話す。
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しかし一方では、選定を喜びつつも、戸惑いをみせる人々もいる。
約1300年の歴史があり、国内でも最古の舞楽とされる「大日堂舞楽」が選ばれた秋田県鹿角市。
同市教育委員会の秋元信夫生涯学習課長は「選定がどのような効果を生むのか分からない。必要であれば、駐車場の新たな整備や英語のパンフレットなどの作成も考えなければならないだろう」という。
秋元課長によると、世界遺産や自然遺産であれば、白神山地などの前例を参考に対応の予測ができる。しかし無形文化遺産は今回が初の選定となるため、観光面などにどのような影響が出るか見通しがまったく立たない状態だという。
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では、無形文化遺産の選定はどのような効果をもたらすのか。
文化庁伝統文化課は「世界遺産は“1点もの”のため、観光面などに大きな効果が出る。それに比べ、無形文化遺産は一度に10件以上が選定される上、祭礼や神楽など同種の文化財が毎年登録されていく。世界遺産ほどの観光アピール力はないだろう」と分析する。
ただし「観光面より、伝承をしてゆく人たちの心にあたえる影響が大きいのではないか」と指摘した。
実際に、大日堂舞楽保存会会長で、大日霊貴(おおひるめむち)神社の宮司、安倍(あんべ)洋直さん(80)は「今までも熱心に伝承に取り組んできたので、無形文化遺産に選定されたからといって取り組み自体は変わらない。しかし選定が将来伝承していく子供たちの誇りとなったり、さらに気を引き締めるきっかけになったりすればうれしい」と話した。
安倍さんによると、同舞楽は少子化などで後継者探しが難しくなっており、舞手の世襲制を取りやめるなどで対応してきたという。
同舞楽にかかわらず、多くの伝統文化で後継者不足が叫ばれて久しい。今回の選定が、そうした状況を少しでも改善する契機になることを期待したい。
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【用語解説】無形文化遺産
無形文化の保護を目的とした「ユネスコ無形文化遺産保護条約」(平成18年発効)に基づき、各締結国が無形文化財をユネスコに提出し、ユネスコにより人類共通の遺産として認定された無形の文化財。来年9月のユネスコの委員会で初の「無形文化遺産リスト」が作成される。厳密な審査が行われる世界遺産の認定とは異なり、価値評価の判定は行われないため、各国が提出した文化財は同リストに原則的に記載される。
日本は国指定の「重要無形文化財」「重要無形民俗文化財」「選定保存技術」の計430件すべてを将来的に提出する方針。提出する順番は、指定の時期の早さや、地域バランスなどを考慮するという。