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【産経抄】9月27日
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今ではほとんど使われなくなったが、「闇将軍」というおどろおどろしい呼び方をされる政治家がいた。言うまでもなく田中角栄元首相だ。昭和49年、金権問題で退陣した後も、自らの派閥を率い、自民党に大きな影響力を行使していたからである。
▼いや影響力といった程度のものではなかった。ロッキード事件で逮捕、起訴された後ですら、歴代の首相を誕生させるキングメーカーの役をつとめた。重要な予算についても真っ先に元首相に陳情したり了解を求めたりする。そんな尋常でない政治が続いた。
▼政治家の出処進退にはいくつもの理由が重なっているのだろう。だからあくまで推測だが、小泉純一郎元首相の唐突な引退表明は田中元首相を反面教師としたような気がする。何しろ小泉氏は「闇将軍」と対立関係にあった福田赳夫元首相の近くにいた政治家なのだ。
▼引退について「総裁選で自らの改革路線が否定され嫌気がさしたのでは」との解説もあった。それなら総裁選でもっと発言すべきだったが、それもしていない。退陣した権力者は軽々に口をさしはさむべきでないという「哲学」があったように思えてならない。
▼推測ついでに言えば、恬淡(てんたん)と見える小泉氏の引退に嫌な思いをした人も多かっただろう。最近、キングメーカーになりつつあるとされる森喜朗元首相もそのひとりかもしれない。空耳でなく「あんたも余計なことをせず、早く引退したら」と言っているように聞こえるのだ。
▼小泉氏を後ろ盾として期待していた人たちはガッカリだろう。元首相として無責任だとの批判もある。だがこれもまるで「闇将軍」の時代に戻りつつあるかのような自民党への警鐘だとすれば、なかなかに味のあるリタイアかもしれない。