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【麻生政権発足考】政治部長・乾正人 プレジデント内閣の船出

2008.9.25 03:16
このニュースのトピックス金融危機

 足かけ20年永田町界隈(かいわい)をうろちょろしてきたが、官房長官が発表していた新内閣の閣僚名簿を首相自らが読み上げたのは初めてだ。内閣の真のスポークスマンは、官房長官ではなくオレ自身だ、という麻生太郎首相の強烈なメッセージが伝わってきたが、狙いはむろん秒読みに入った衆院選にある。

 一秒でも長くメディアに露出し、「党首力」の差で小沢一郎氏率いる民主党に差をつけようという戦術だ。とはいえ、売り物である閣僚メンバーの大半が、当日朝の新聞辞令通りでは、私を含めた「予想屋」はほっとしても、国民には興ざめだったのではないか。

 玄人を気取って書けば、米国発の金融危機を回避するため財務相と金融担当相を馬力のある中川昭一氏に兼ねさせ、地味ながらも他人の話をじっくりと聞き、落としどころを探る調整役にぴったりの河村建夫氏を官房長官に抜擢(ばってき)するなど、さすが無駄に冷や飯を食っていない。しかし、麻生チーム全体の鮮度には大いに難がある。

 34歳の戦後最年少大臣が誕生したにもかかわらず、なぜそう感じてしまうのか。初入閣した5人のうち、実に4人が父や祖父が国会議員だった世襲だからだ。残る1人も父が県会議員で、全員が「政界関係者の子女」。内閣全体でも首相を含め18人中、6割を超す11人が世襲議員だ。ついでに書けば、吉田茂元首相の孫である麻生氏を含め首相(党総裁)経験者4人の子孫が加わった華麗なる「プレジデント内閣」でもある。鳩山一郎元首相の孫の邦夫氏を総務相に厚遇、「吉田・鳩山連立内閣」と揶揄(やゆ)する向きもある。

 なぜ政治家という職業が、いつの間に歌舞伎と同じような「家の職業」になってしまったのか。

 一つには、国会議員に「新規参入」するには、諸外国に比べ、ハードルが高すぎるからだ。ことに自民党から出馬するには(1選挙区で3人以上当選を基本とした中選挙区制よりはましになったが)、まだまだカネがかかる。落選のリスクをとって、個人で数千万円以上のカネを使って出馬できる奇特な人は限られる。

 有権者からいえば、名も知らぬ新人候補よりも「麻生家」「小泉家」「福田家」出身というブランドへの信頼感がある。30歳代までに親から代替わりすれば、当選回数を重ねることで首相にまでたどりつく可能性は格段に高くなり、地元有権者の期待も大きくなる。 もうひとつ、終戦直後の一時期を除いて戦後63年にわたって安定した社会が続いたことも大きい。昭和20年の敗戦とGHQによる公職追放によって戦前の権力構造が崩れ、古い政治の世界へ若い力がどっと参入したのが昭和22年。新憲法下最初の総選挙で、後に宰相となる田中角栄、中曽根康弘両氏が初当選したのは偶然ではない。逆説的だが戦後の繁栄が政界の動脈硬化を引き起こしている。

 麻生内閣は、「世襲力」を結集して、政官癒着体制の解体を主張、「破壊力」を売りにする小沢民主党に対抗しようとしているようにもみえる。皮肉なことに小沢氏もまた世襲議員なのだが。

 世襲すべてが悪ではない。しかし、日本政治に活力が乏しく、2代続けて首相が1年で辞めた原因の一つに世襲の弊害があるのは明白だ。この問題に真剣に取り組むのは、麻生首相か小沢代表かも総選挙ではじっくりと見極めたい。(いぬい まさと)

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