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【主張】日銀総裁人事 政治不況の引き金引くな

2008.3.12 03:03
このニュースのトピックス主張

 日本銀行の武藤敏郎副総裁ら次期正副総裁候補が衆参両院で所信を述べ、武藤氏は日銀の独立性確保を強調した。しかし、民主党は財務省出身の武藤氏の昇格は財政・金融分離の観点から問題があるとして、反対する方針を決めた。

 現状では「武藤総裁」案が参院で否決される公算が大きい。総裁ポストに空席が生じれば、市場に懸念を与え、「日本売り」を加速させる。それを承知のうえで「責任は政府にある」と知らぬ顔を決め込むのか。政治が経済の阻害要因であることを自ら証明するような行為だと認識すべきである。

 民主党のいう「財金分離」は、金融政策が財政政策のしわ寄せを受けるとの懸念を指すのだろう。しかし、日銀の独立性は新日銀法で以前よりはるかに担保されている。

 むしろ、政府から距離を置きすぎて経済運営での共通認識を求められた総裁もいた。かつて最強といわれた旧西独の中央銀行総裁には財政当局出身者も多く、総裁の資質は出身官庁に左右されるわけではない。

 武藤氏も所信聴取の中で、米国の低所得者向け高金利型住宅ローン(サブプライムローン)問題などを背景とした厳しい内外経済の現状を分析した上で、国民、市場との対話と日銀の独立性確保を強調した。妥当な認識だ。

 仮に「総裁空白」という異常事態になれば、それこそ中央銀行が政争の具にされたとして日銀の独立性は決定的に揺らぐ。そして国際社会や市場の信認を失うことになる。

 それは急速に進む円高、株安に拍車をかけよう。すでに現在の水準でも3月期決算への影響が懸念されているのに、さらに市場が混乱すれば、企業の設備投資意欲と個人消費を冷やすのは確実だ。そうなれば、まさに“政治不況”につながりかねない。

 にもかかわらず、民主党などの質疑はバブル経済と日銀の責任、デフレスパイラル時の国債買い入れなど過去の政策が中心で、混迷する総裁人事が与える日本経済への悪影響に対する自覚はみられなかった。伊藤隆敏氏の副総裁不同意も理由が不明確だ。

 なにがなんでも、政府・与党を窮地に立たせたいという民主党の行動原理には、世論もついていけまい。参院本会議での採決前に再考を求めたい。

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