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【正論】欧州で「戦争と犯罪」を考える 犯罪心理学者・聖学院大学客員教授 作田明 (1/3ページ)
このニュースのトピックス:正論
原始にも殺人はあった
8月初めにヨーロッパを訪れ、犯罪と戦争について比較して考えることがあった。
戦争が古くから行われてきたことは明らかであるが、一方で原始時代の人類にはほとんど殺人がなかったのではないかという、過去にユートピアを求める発想は動物学や考古学の発展によって明確に否定されてきている。(詳しくは拙著「現代殺人論」を参照されたい)
フランスの社会学者エミール・デュルケムは「犯罪の常態性」という概念を提唱している。デュルケムは社会から異端(逸脱とか犯罪)を排除するのは、社会の全員にわたって意識の絶対的な一致が要求されるはずだから、不可能であると考えていた。
ところで人類が20世紀に2つの世界大戦を引き起こしたことから、戦争こそが最大の犯罪であり、そのもたらす結果は個人的な犯罪など全く比較にならない悲惨なものであるという議論がみられるようになってきた。
犯罪学者の多くは戦争犯罪についての議論を避ける傾向があるが、これは犯罪学者の対象が基本的には個人である犯罪者であることと、そもそも近代的国家は国際法を順守し、理性に基づいて行動するはずだから、その動機において凶悪犯罪者にみられるような自己中心的・反社会的傾向は存在しないと考えられてきたのであろう。
人間社会は進化したか
ところがそう遠くない過去に私たちはヒトラーのようにE・H・エリクソンをはじめ数多くの精神分析家や精神科医が研究対象としたような人物が文明国を支配するという経験をしたのであるから、戦争も一種の犯罪であるという議論も一定の説得力を持っていると考えるべきであろう。

