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【老いの一喝】ノンフィクション作家・上坂冬子 福田首相が靖国参拝する日
北京オリンピックの日程が決まったとき、私はこれで日本の首相も堂々と8月15日に靖国参拝ができる、と思った。
実は、この原稿は15日を待たずに書いている(15日掲載の原稿を15日に書いたのでは間に合わない)。いま私はギャンブラーの心境だが、あえて言い切ろう。すでに福田康夫首相は靖国参拝をしないらしいと報道されたが、私はそうは思わない。今日こそ靖国参拝を断行し記者団に囲まれて、
「何事にも時期というのが必ずあるものです。政治家の手腕とは、その時期をつかむことができるか、できないかじゃないデスカ」
と発言されるかもしれない。その情景を予測して私は「いや、ご立派でした」と賛辞を準備しているのだが、さてどうなることやら。
もし、この原稿が人々の目にふれる前に福田首相が早々と参拝されていたなら、それはそれで私は日の丸の扇子を広げて喝采(かっさい)を送りたい。
参考までに任期中、春秋の例大祭と敗戦の日に欠かさず参拝されたのは鈴木善幸元首相だけだが、福田赳夫元首相は就任翌年に同じくそれを果たして退陣した。
8月6日に広島の慰霊祭に参列したあと息つくまもなく8日に北京の開会式に出席し、さらに疲れもみせず9日に長崎の慰霊祭に飛んで8月15日に靖国参拝を果たしたとすれば、前期高齢者の首相にとってかなりハードな日程となろう。このけなげな行動に中国は口出しできまい。
小泉純一郎元首相はいざとなったら小刻みに8月15日を2日ズラして13日に参拝したし、安倍晋三前首相は参拝せず日ごろの言動とちがうではないかと世の批判を受けた。それに比べれば福田首相は何と恵まれた状況にあることか。
竹島が問題になっている。対日平和条約を読み返してみたところ、当時独立したばかりの朝鮮半島に含まれる島の名が列挙されているが、そこには竹島のタの字も見当たらない。日韓基本条約締結の際には両国とも条約締結を優先したいばっかりに、竹島問題を“未解決の解決”などとわけのわからない文言で「棚上げ」して切り抜けた。もちろん日本は立場を微動だにさせていない。
にもかかわらず、日本が新学習指導要領の解説書に竹島は日本領だと述べたといって、韓国は駐日大使を一時帰国させたうえ首相を竹島に上陸させている。おまけにアメリカまでが竹島は韓国領だなどと“出まかせ”を言い放った。
あんなとき、なぜ日本は間髪を入れず「モメてはいるが、日本は立場を変えていない」と一喝しないのか。
かつて私は大平正芳元首相に、どうして質問を受けるたびにアーウーと口ごもるのかと聞いたことがあるが、こんな答えが返ってきた。
「政治家にとって必要な間です。アーと言いながらモスクワがどう思い、ウーと言いながらワシントンはどう反応するかを見極めている。即断即答、先陣を切るばかりが政治ではない」
福田首相は手堅い組閣をやってのけたとみる人が多い。ならばパフォーマンスで世論を沸かせた政治にとどめをさすべく、ここで8月15日靖国参拝を根づかせる偉業をやってのけてはどうか。(かみさか ふゆこ)

