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【正論】「誠実本位」か「成功本位」か 文芸批評家・都留文科大学教授 新保祐司 (1/3ページ)
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「産経志塾」の講師として
9月2日、3日の2日間開催された第1回「産経志塾(しじゅく)」で、2日目の講義を担当させて頂いたが、とても楽しかった。そもそも若い人たちに何かを伝えていくことはやりがいのあることであるが、今回は特に、参加した塾生が大変意欲に満ちているのがひしひしと感じられたからである。
論語に「憤せずんば啓せず」という言葉がある。物事を深く理解したいという思いにもだえ奮い立つようでなければ、教えないと孔子は言ったのである。逆からいえば、自発的に学ぼうとしない人間には、何を教えても無駄だということである。
その点、「産経志塾」の参加者は、内発的に学ぼうという意志が強くある者たちであり、その雰囲気は会場にあふれていた。そんな空気の中で講義するのが楽しくない訳がない。
講義の後の質疑応答の中で、内村鑑三の「成功の秘訣(ひけつ)」に触れた。これは、10カ条から成っているが、当日は6番目の「能(よ)く天の命に聴いて行うべし。自(みず)から己(おの)が運命を作らんと欲すべからず」をとりあげて、質問に答えたが、感想文に、この言葉が印象的だったと書いた塾生がいた。しかし、他の9カ条については時間の制約もあり、触れることができなかったので、ここで、それをめぐって書いてみようと思う。
内村鑑三が記した心構え
この「成功の秘訣」は、大正15年(1926年)、内村鑑三、65歳のときに書いたものである。晩年、内村は夏を、信州の或る温泉宿で過ごすことにしていた。そこの、当時21歳だった若主人に、将来経営者になるにあたっての心構えを念頭に書き与えたのが、この「成功の秘訣」10カ条である。

