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【街物語】(34)消えぬキューポラの火 鋳物の街、埼玉・川口市 (1/3ページ)

2008.9.7 07:36
このニュースのトピックス街物語
鋳物を“楽器”に使う打楽器奏者の野尻さん。リサイタルに向け練習に余念がない鋳物を“楽器”に使う打楽器奏者の野尻さん。リサイタルに向け練習に余念がない

 木琴や鉄琴の隣に、フライパン、ベーゴマ、マンホールのフタなど埼玉県川口市産の鋳物製品が並ぶ。打楽器奏者、野尻小矢佳(さやか)(23)の手にかかれば、これらのすべてに“楽器”として命が吹き込まれる。

 「意外といい音が出るんですよ」。野尻はそういうと即興で演奏してみせてくれた。

 《トントントントントン、トットトン、チーン、ポポポーン…》

 ガチャガチャとした無粋な音を想像していたら度肝を抜かれた。軽やかで繊細。目を閉じると他の楽器とも違和感なく調和し、音の強弱と多彩なリズムによって、頭の中には野尻の作り出す神秘的な世界観が広がった。

 野尻は川口の鋳物工場の一人娘として生まれた。昨年3月に武蔵野音大を卒業し、同年5月には日本打楽器協会主催の新人演奏会でグランプリを獲得した。打楽器界の期待の新星だ。

 鋳物を楽器として取り入れたのは昨年11月。親しい町工場の社長に頼まれ、工場内でコンサートを開いた。

 「せっかく鋳物工場でやるんだから」。軽い気持ちから鋳物を使うことを思いつき、バチを片手に知り合いの工場を回って、楽器になりそうな製品を探した。鋳物の形状や厚さ、原料などで音の高低や質はすべて違った。

 「野尻さんとこの娘が、鋳物で演奏するらしい」

 うわさはたちまち広がり、コンサート当日は用意した150席が満席に。立ち見を含め300人以上が詰めかけた。

 「おれたちの鋳物がこんな音を出すなんて…。ありがとう」

 普段は口数の少ない職人たちから、感激と感謝の言葉が寄せられた。

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鋳物を“楽器”に使う打楽器奏者の野尻さん。リサイタルに向け練習に余念がない
鋳物を“楽器”に使う打楽器奏者の野尻さん
鋳物を“楽器”に使う打楽器奏者の野尻さん
技術の粋を結集した製品で「川口ブランドを世界に発信したい」と伊藤光男社長
伊藤鉄工が普段製造している商品。住宅の配水管など、一般には分かりにくいものが多い
数は減ってきたが市内に点在する形で鋳物工場は残っている
川口市内のいたるところに鋳物のオブジェが見られる
鋳物工場のすぐ横にそびえる高層マンション
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