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【街物語】(34)消えぬキューポラの火 鋳物の街、埼玉・川口市 (1/3ページ)
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木琴や鉄琴の隣に、フライパン、ベーゴマ、マンホールのフタなど埼玉県川口市産の鋳物製品が並ぶ。打楽器奏者、野尻小矢佳(さやか)(23)の手にかかれば、これらのすべてに“楽器”として命が吹き込まれる。
「意外といい音が出るんですよ」。野尻はそういうと即興で演奏してみせてくれた。
《トントントントントン、トットトン、チーン、ポポポーン…》
ガチャガチャとした無粋な音を想像していたら度肝を抜かれた。軽やかで繊細。目を閉じると他の楽器とも違和感なく調和し、音の強弱と多彩なリズムによって、頭の中には野尻の作り出す神秘的な世界観が広がった。
野尻は川口の鋳物工場の一人娘として生まれた。昨年3月に武蔵野音大を卒業し、同年5月には日本打楽器協会主催の新人演奏会でグランプリを獲得した。打楽器界の期待の新星だ。
鋳物を楽器として取り入れたのは昨年11月。親しい町工場の社長に頼まれ、工場内でコンサートを開いた。
「せっかく鋳物工場でやるんだから」。軽い気持ちから鋳物を使うことを思いつき、バチを片手に知り合いの工場を回って、楽器になりそうな製品を探した。鋳物の形状や厚さ、原料などで音の高低や質はすべて違った。
「野尻さんとこの娘が、鋳物で演奏するらしい」
うわさはたちまち広がり、コンサート当日は用意した150席が満席に。立ち見を含め300人以上が詰めかけた。
「おれたちの鋳物がこんな音を出すなんて…。ありがとう」
普段は口数の少ない職人たちから、感激と感謝の言葉が寄せられた。








