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【産経抄】8月22日
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フランスの作家、ドーデの短編小説「最後の授業」は、教科書に採用されたこともあって、日本人にはなじみ深い作品だ。普仏戦争でフランスが敗れ、1871年にプロイセン領となったアルザス地方が舞台となる。
▼ドイツ語以外の言葉を学校で教えることが禁止され、学校を辞めることになった仏語教師、アメル先生が最後の授業で、母国語の大切さを訴える。もっとも、仏独の国境地域に位置するこの地方は、戦争のたびに、帰属が入れ替わってきた。
▼そもそもアルザス語は、独語の方言に近く、フランスに都合のいい物語にすぎないという批判もある。最後となるとわかって、初めてその大切さに気づいた生徒と教師が、いつくしむように過ごした時間を描いた作品、ととらえた方がいいのかもしれない。
▼北京五輪で、健闘が続く日本選手団のなかでも、ソフトボール選手の金メダルは、ひときわ輝きが増す。エースの上野由岐子投手(26)の、腕も折れよとばかりの熱投が、王者、アメリカをねじ伏せた。これまで湿りがちだった打線も火を噴いた。
▼まさに、死闘という言葉が、ふさわしい試合の連続だった。いや、日本選手だけではない。世界最強のプライドをかけて、アメリカは日本の前に立ちはだかり、オーストラリアは、世界最速の上野から、土壇場でホームランを放つ粘りを見せた。金メダルへの執念だけでは、説明がつかない。4年後のロンドンで、正式競技からはずれる「最後の試合」で、見せてくれた最高のパフォーマンスだった。
▼アメル先生は、黒板に「フランス万歳」と大きく書いて、「最後の授業」を終える。「ソフトボール万歳」。選手たちの叫びは、正式競技への復帰にきっとつながる、と信じたい。