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【すごいぞ日本】ファイルVI 商社再生(2)モノの流れを演出する

2008.7.13 03:27
このニュースのトピックスすごいぞ日本
完成したアブダビの発電・造水プラント完成したアブダビの発電・造水プラント

 ■モノの流れを演出する

 電力自由化の大きな動きの中で、発電プラント事業の計画は世界的に増加傾向にある。アラブ首長国連邦(UAE)のアブダビ水・電力庁が大規模火力発電・造水施設(200万キロワット・日量75万トン)計画を打ち出したのも、その流れに沿ったものだ。2004年7月の国際入札に向けて、総合商社の丸紅はロンドンを拠点に態勢づくりを急いだ。

 このプロジェクトの特徴は「垂直統合型事業」であることだ。発電所建設だけでなく、その後の運転・保守にまで受注者が責任を持つ。いわば川上(発電)から川下(電力販売)まで、総合的に行う電力事業である。旧来のビジネスモデルのように装置システムを納入すれば、「はい、完結」というわけにはいかない。

 国際連合体による応札には、総額30億ドル(約3300億円)の巨額投資のリスク分散だけでなく、プラント建設の技術力、信用力、装置運転の技術力など各分野で最良のパートナーを見つける必要もあった。

 発電・造水プラントは、ボイラーで高温の蒸気をつくり、それを羽根車(タービン)にぶつけて発電するシステムと、蒸気の一部を造水装置に回して海水を蒸発させ、真水をつくるシステムの組み合わせであり、それぞれに高度化した技術が求められる。

 丸紅はまず、発注者のアブダビ水・電力庁と共同出資の事業会社「タウィーラ・アジア・パワー」を現地に設立する構想を示した。その結果、日本の大手エンジニアリング企業の日揮、マレーシアの電力事業者のパワーテック社、中東やアフリカに投資実績のある米国のファンド会社BTUがこの事業会社に出資するパートナーとなった。

 発電所の建設を請け負うメーカーとしてはドイツのシーメンス、造水装置ではやはり世界的に実績の高いイタリアのフィジア社との交渉がまとまった。

 また、タウィーラ・アジアに融資する銀行には、日本の国際協力銀行のほか英大手のスタンダードチャータード銀、仏パリバ銀、独KFWなど20行以上が参画することが決まった。

 入札結果は一番札だったが、これはあくまで最優先交渉権を得ただけの話。プロジェクト獲得にはここから本番の作業が始まる。発注側の厳しい要求に対して再協議と交渉を何度も繰り返し、正式に受注契約の合意に達したのは6カ月後の05年1月だった。

 そして契約から3年後の今月、新たな発電・造水設備が完成し、運転開始にこぎ着けた。ロンドンチームを率いた宮田裕久・電力インフラ部門海外電力プロジェクト第二部長は「契約後も含め作成した契約書は100種類以上。交渉での会話は英語、独語、仏語、アラビア語…。ビジネスの考え方の違いも微妙にあり、本当にしんどかった」と振り返る。

 そうした体験を通し、総合商社は国際的なスケールでモノの流れを演出する新たな役割を発見したともいえそうだ。いまは我が世の春を謳歌(おうか)する中東の産油国も追い風がこのまま続くとは思っていない。UAEは石油輸出に頼る経済から工業化社会への脱皮を目指している。その産業振興の基盤として欠かせない電気と水。プロジェクトの成功は日本とUAEの関係親密化の一翼を担うかたちにもなった。(小林隆太郎)

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完成したアブダビの発電・造水プラント
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