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【停車場ストーリー】岳南鉄道・岳南原田駅 工場の街の小さな駅
カンカンカン…。岳南原田駅(静岡県富士市)の踏切で警報機が鳴り始めた。やがて姿を現した下り電車は、正面をオレンジ色に塗った“1両編成”。雨のホームで数人の乗客を降ろすと、白い煙を煙突から吐き出す工場のほうに走り去った。続いて上り電車が発車すると、じっと待っていた古参の電気機関車が「ピッ」と甲高い警笛を一声。構内にある倉庫の専用線で貨車の入れ替え作業を再開した(動画はこちら=産経PODCAST)。
岳南鉄道(吉原−岳南江尾間、全10駅 9.2キロ)は、昭和23年に開業。富士山系の豊富な地下水と森林資源によって集積した製紙工場への通勤や原料・製品の輸送を担ってきた。貨物列車を運行する私鉄は全国でも少なく、工場地帯を走る雰囲気は独特だ。
道路に面した小さな駅舎に愛着を持つ人は多い。だが、「工場の引き込み線が廃止され、乗客も減って以前の活気はないですよ。5人いた駅員も今は朝を除けば無人です」と同駅などの駅長代理を務める渡辺康英さん(66)。
同社によると、貨物量は昭和44年度の年間約99万9000トン、旅客数は42年度の約 511万人をピークに減少を続け、昨年度はそれぞれ約9万2700トンと約73万人に。斉藤俊彦・鉄道部長は「貨物はトラック中心になり、マイカー通勤が増えたのが大きい」と分析する。ただ、経営努力が奏功し、平成16年度以降の旅客数は増加傾向に転じたという。
駅自体の活気は失われたが“名物”は健在だ。駅舎隣のそば・うどん店「めん太郎」には、一日中ひっきりなしに客の出入りがある。交代で店を切り盛りする杉山淑子さん(47)は「開店前から待っていてくれる常連さんが何人もいる」と明るい。
この日、入れ替えに使われた機関車「ED 501」は昭和3年製だ。長野県の上田温泉電軌(現在の上田交通)から名古屋鉄道を経て昭和45年に移籍した。大きな故障もなく「80歳」のいまも元気に働く。運転歴27年の山岸洋一さん(49)は「古くても力があって、きちんと扱えばそれに応えてくれる。今後も長く頑張ってほしい」と“相棒”を思いやる。
こうした車両がファンの人気を集め、「沿線にはカメラを手にした人も多い」と斉藤部長。だが、人気を収益に直結させるのは難しく、同社では抜本的な増客策を模索中だ。線路と道路の両用車「DMV」もその一環で、富士市と共同実験を行うなど導入に向けた検討を行っている。
今年は開業60周年。恒例の「ビール電車」のほか、7月11日には「ジャズトレイン」を運行し、生演奏のジャズと生ビールで地域に密着した鉄道をアピールしたい考えだ。(磯山道彦、写真・動画も)
■岳南原田駅 1日の平均乗降者数=209人(平成19年度)▽運行本数=平日、土曜上下66本、日曜祝日上下64本▽開業=昭和26(1951)年12月20日▽周辺の主なスポット=源頼朝ゆかりの鎧ケ渕親水公園、永明寺(ようめいじ)、滝不動など。「ジャズトレイン」(1人2500円=完売)と「ビール電車」(同2200円)の問い合わせは、岳南鉄道(電)0545・53・5111。





