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【産経抄】10月4日
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昨日の朝刊に天皇陛下が稲刈りをされたという記事があった。皇居内の水田で5月ごろ植えられた稲を収穫される。そのコメは11月23日の新嘗(にいなめ)祭で神前に供えることなどに使われる。稲作が日本文化の源流であったことを彷彿(ほうふつ)させるような伝統行事だ。
▼毎日のように食品汚染や偽装が伝えられているだけに、どこか素朴でホッとさせられるニュースだった。しかし皇居で栽培される穀物はコメだけではない。先月23日には、孫の愛子さまや悠仁さまも交え、天皇、皇后両陛下がアワ(粟)の収穫をされたそうである。
▼アワといえば今では鳥の餌か、粟餅(もち)を思い浮かべるぐらいだろう。だがかつて水の少ない土地では、コメの代わりによく植えられた。戦後、食糧が十分でなかったころ、コメにアワを足した「粟飯」で腹をふくらませた記憶のある方もおられるかもしれない。
▼同じ時代、池田勇人蔵相は国会で米価の値上げにからみ「所得の多い者はコメ、少ない者はムギ本位としたい」と述べた。これが「貧乏人はムギを食え」発言として問題になった。当否はともかく、日本人の主食はあくまでコメで「白米願望」が強かったことを示している。
▼アワもむろん五穀の中では脇役だった。だから「粟とも稗とも知らず」といえば、アワとヒエの区別もつかないという高い身分や金持ちの生活を言った。それでも「粟一粒は汗一粒」という。こんな黄色い小さなアワの粒を育てるのも、農家にとって大変な作業だった。
▼そんな労苦に応えるためか、皇室では毎年、この脇役も植えてきた。新嘗祭ではコメのご飯とともに、アワのご飯も神々に捧(ささ)げられるそうだ。「粟飯世代」の人間としては、何だか鼻のあたりがツーンとしてきそうな話である。