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【産経抄】9月18日
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作家には、それぞれ気分転換の流儀がある。山本周五郎の場合は、小説の筆が滞ると、よく手紙を書いた。『周五郎に生き方を学ぶ』(木村久邇典著)によると、あて先は友人や知人ばかりではない。
▼たとえば、街で偶然買ったとんかつソースが、とてもうまかったとする。レッテルで製造会社を確かめると、早速、こんな手紙をしたためた。「食べ物屋には、ちょっと評判がよくなると店舗を広げたり、品質をさげたりして結局、事業に失敗する例がザラにある」。
▼「あなたのところは絶対そんなマネをなさらず、ぜひこの高品質を維持していただきたい」。こんな手紙を受け取って、ソース会社の経営者が喜ばなかったはずがない。もっとうまいソースを作ろうと決意を新たにしたはずだ。
▼汚染米の不正転売問題は、自殺者が出る最悪の事態を迎えた。三笠フーズから出荷された汚染米が、24都府県で、約380社にも及んでいることがわかり、政府は全社名の公表に踏み切った。消費者の不安を鎮めるために、やむを得ない措置だったとはいえ、汚染米と知らずに購入した「被害者」の業者が、名前を出されたことに、怒りをぶちまけるのは当然だ。
▼「店がつぶれてしまう」との悲痛な声も上がる。本来なら不正を見逃した農水省が、公表の前に、きちんと謝罪し、省を挙げて、風評被害を防ぐために全力を傾けるべきだった。ただ、大臣や次官の発言を聞いていると、この役所にはもはや何も期待できそうにない。
▼ならば、消費者が動くしかない。焼酎、和菓子、中華料理…。リストには、地元の人たちに長年親しまれてきた、名品の作り手が含まれているはずだ。周五郎のように、そんなまじめな業者を励ましてほしいのだ。