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【きのうきょう】小さな花
兵庫県尼崎市 渡辺君子(64) 主婦
お隣にマンションが建ってから、日当たりが悪くなった。路地に植えてある草花の茎がヒョロヒョロになって、花の色も薄い。冬はビル風が強く吹き、ときには植木鉢も倒してしまうほどだ。「かわいそうだから、もう花は植えられない」と夫は嘆いた。
彩りのない殺風景な路地となって数年がたったある日、植木鉢をふと見ると小さな芽が出ていた。日が一時しか当たらない路地で、少しずつ成長し、10センチほどの葉を広げた。見たことのない植物で、やがて白い小さな小さな花が咲いた。
「これは山の中に咲く花だよ」と夫が感嘆して言った。でも、どうしてうちの植木鉢に? 「小鳥が種を運んできたのかなぁ」と夫はそれから日陰に強い植物を路地に植えた。
今年も大きな葉を重ねたてっぺんに、白い花が咲き、風に揺れている。山の風ならぬ路地の風に揺れて、小さな花は見る人をなんとなくホッとさせている。