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【すごいぞ日本】論考編III(上)危機に強いライフスタイル

2008.7.19 03:07
このニュースのトピックスすごいぞ日本

 このところ巷(ちまた)の話題は猫も杓子も「環境問題」だ。戦後何回目かとなる今回のエコブームは最近流行の地球温暖化「思想」の賜物であろう。一部の科学者に言わせれば、本当に地球が温暖化しているのか、実は分からないという。しかし、北極で融解しつつある氷の映像を毎日テレビで見せられると、如何にへそ曲がりの筆者でも、地球温暖化が深刻化しつつあると信じるようになる。

 先月末、インドで開かれた国際会議に参加した。夜行便の飛行機を乗り継ぎ、昼前にムンバイ空港に着くと、案の定、迎えに来るはずの車がない。気温34度。重い荷物を手に直射日光の下をあちこち彷徨(さまよ)い、暑さでへとへとになった。随分柔になったものだ。

 慣れているのか、ムンバイの人々はこの灼熱の中で黙々と仕事をしている。

 ほどなく迎えの車が到着した。冷房の効いた車内でほっと一息ついて子供のころを思い出す。1960年代、日本の庶民には自動車もクーラーもなかった。今のムンバイと同じだろう。

 2050年までに温暖化ガスを半減すべきだという。それは60年代の生活に戻るということだ。車も冷房もなかったあの「三丁目の夕日」の日常に戻る覚悟が我々にあるのだろうか。

 ムンバイ庶民は実に活気に満ちていた。これからもインド経済は、中国経済と同様、確実に拡大していくだろう。合わせて30億近いインド人と中国人が快適な生活を目指し始めるのだ。その夢を捨ててエネルギー消費の大幅削減に同意するとは到底思えない。

 一方、インド、中国が参加しなければ、米国も温暖化対策には本腰を入れないだろう。そもそも米国のエネルギー消費は世界一非効率ではないか…。そんなことを考えながら、インドから帰国の途についた。

 成田空港に戻る度につくづく感心するのは、日本という組織・社会の律儀さである。空港にはゴミひとつ落ちていない。朝の始発駅で電車を待つ人々は言われなくても列を作り、順番を守る。日本で当たり前の光景が外国では当たり前ではないのだ。

 ムンバイ空港内の混乱は市内の混沌とまったく変わらない。北京の新空港は立派だったが、ターミナル間を移動する自慢の無人電車に満足な車内アナウンスはなかった。組織作りの不得意な彼らがルールを守って効率的な省エネをやれるとは思えない。

 日本エネルギー経済研究所によれば、2030年に世界のエネルギー消費量は石油換算で165億トンとなり、05年水準より6割増える。インド、中国はもちろん、米国や欧州諸国もエネルギー消費を増やす中で、主要国では日本だけが消費を減少させるという。

 人口が減少するからだけではない。日本人の真面目さ、組織への忠誠、ルールの遵守といった特性がエネルギーの効率的利用を可能にしているのだ。

 狭い国土に1億人以上がひしめき合って生きる日本では、組織が優先され、個人の自由は制約されがちだった。それは日本社会の欠点であるかのように語られてきたが、地球温暖化という人類全体の危機が避けられないとしたら、この日本人のライフスタイルこそが実はこれからのグローバルスタンダードになる可能性もある。発想を少し変えてみる必要がありそうだ。(寄稿 宮家(みやけ)邦彦)

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 宮家氏は元外務省中東アフリカ局参事官。現在立命館大客員教授、AOI外交政策研究所代表。54歳。

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