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【教育動向】教科書は本当に「倍増」できるのか
国語や理科などの教科書のページ数を、倍増させたらどうか……。政府の教育再生懇談会(安西祐一郎座長)で、そんな案が持ち上がっています。新聞各紙でも大きく取り上げられましたから、「昔に比べればすいぶん薄いんだから、けっこうなことだ」「重くなって、子どもの持ち運びが大変にならないかしら」などなど、いろいろな感想を持たれたかもしれません。しかし、教科書の厚さひとつとっても、さまざまな問題をはらんでいるようです。
直接のきっかけは、5月16、17日に行われた同懇談会の合宿審議で各国の英語教科書を見た福田康夫首相が、5月26日の会合で「日本の教科書は内容に乏しいと感じた。英語に限らず、他の国に比べて軽い感じがする。質、量とも格段の充実が必要だ」と述べて、審議を要請したことにあります。ただし、同懇談会の前身である教育再生会議も、昨年1月の第一次報告で「ゆとり教育」の見直しとからめて「薄すぎる教科書の改善」を提言していましたから、「会議」のフォローアップ機関である「懇談会」としても、教科書の厚さを審議することは当然と言えるかもしれません。
7月28日の委員懇談会に提出された論点メモでは、(1)自学自習にも適した丁寧な記述、文章量の充実(2)発展学習、補充学習に関する記述の充実(3)実生活や実社会との関連など興味、意欲を高める記述の充実(4)豊かな情操や道徳心の育成などに資する題材の充実……を提案しています。このうち(2)と(4)は「会議」でも提言されていたことですから、新機軸は(1)と(3)ということになります。また(3)は、先に告示された新しい学習指導要領の考え方の一つですから、残る(1)が新しい提案、ということになるでしょうか。
教科書は、先生が授業で教えるための「主たる教材」(教科書発行法)と位置付けられています。たとえ教科書が薄かったとしても、授業で肉付けをしたり、副教材などで補ったりすればよい、というわけです。一方で、教科書の内容は入試問題にも出されるため、書いてある内容はすべて教え、子どもに覚えさせなければならない、という観念も根強くあるのが現実です。
論点メモでは、一人で読んでも理解できるようにしたり、練習問題や原典の引用などをたくさん盛り込んだりした教科書にしたらどうか、と提案しています。そうなると、先に見たような教科書観を大きく転換することが求められます。それは教える側ばかりでなく、学ぶ側、さらには入試問題を出す大学なども、考えを改めることが不可欠になるでしょう。
実はもう一つ、重大な問題があります。ページ数を大幅に増やせば、それだけコストがかかるということです。現在、小・中学校の教科書は無償で給与されていますが、そのために394億円(2008<平成20>年度)もの予算を計上しています。もし予算の大幅な拡充が難しいとしたら、諸外国のように貸し出し制にするとか、有償にするといった案も浮上してくることも考えられそうです。
(提供:Benesse教育情報サイト)