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【産科医解体新書】(6)母体搬送先が見つからない
産婦人科医になって、ある程度仕事を覚えてくると、当直業務が爆発的に増えていきました。当直で最も辛(つら)い仕事の一つが、「母体搬送先を見つける」という作業です。主に緊急で発生したハイリスクの妊婦さんを、より大きな病院施設へ送り届けることですが、母体搬送することで患者さんはより高度な医療を受けることができます。
この母体搬送、なかなか一筋縄ではいかないのです。東京都内のように周産期の搬送網が比較的しっかりしている場所でも、時間帯によっては受け入れが非常に難しいのです。
まず、パソコンの端末で受け入れ可能な施設を検索するのですが、「受け入れ可能」と表示されていても、タッチの差で他からの母体搬送で埋まってしまうこともあります。逆に端末上、「不可能」となっていても可能となるケースもあるため、最終的には電話をかけて搬送先を見つけることになります。
搬送先を探す業務を始めると、あっという間に2時間程度は経過してしまいます。この間、僕らは遊んでいるわけではないのですが、妊婦さんの家族などには随分心配な思いをさせているはずです。夜中に搬送先がすぐに見つかるのは、よほど運が良いということです。
本来はその地域ごとに搬送網があるのですが、受け入れ先が見つからないときは地域外へ搬送を依頼しなくてはならないことも多々あります。搬送業務をしている間、自分たちの病院の業務は一時的にストップせざるを得ません。ここで万が一、他の分娩(ぶんべん)や、それに伴うトラブルが発生すれば、何かしらの事故が起きてもまったく不思議はないと思います。
そんな心配をしながら、僕らは手分けをして必死で電話をかけ続けるしかありません。搬送先が見つからず、夜中から朝まで電話をかけ続けたこともありました。この問題は、僕ら産科医だけではどうすることもできないのです。(産科医・ブロガー 田村正明)