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【酒とジャズの日々】名演案内 ジョン・コルトレーン
■「ディア・ロード」
ジャズバー「G」が開店して1年半。当初、ジョン・コルトレーンやエリック・ドルフィーがガンガン流れていたが、最近ではほとんど聴くことがない。
「結局ね、お客さんを呼ぶのは女性ボーカルとピアノ、それが現実です」
確かにコルトレーンやドルフィーのフリーがかった音楽は、こちらによほどの気合がない限りきちんと向き合えるものではない。
「だからといって、コルトレーンの『バラード』を流すのは、なんだか物欲しげでいやなんですね」
その夜は珍しくマスターとふたりきり。ブルイックラディをなめていた。アイラモルトにしては癖のないきれいな味の酒である。
コルトレーンの『トランジション』(1965年録音)をリクエストする。
2曲目の《ディア・ロード》は巨大な岩山に挟まれた谷間に咲く白ユリのような曲。柔らかなタッチで細かくリズムを刻むロイ・ヘインズのドラムスに支えられ、コルトレーンのテナーサックスは、美しいメロディーを祈るように美しい音で奏でる。そこには何の邪心も感じられない。これこそ天上の音楽。
「葬式にはこの曲もいいかも」ともらすと、「はまりすぎでいやだな」と言ってマスターはたばこの煙を吐き出した。(桑原聡)

