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【酒とジャズの日々】名演案内 クリス・コナー「バードランドの子守唄」
「かわいい娘を店に置いてよ。そうしたらもう少し足しげく通うから」
「何を言ってるんですか。うちには常に専属の娘がいるじゃないですか。初代がジュリー・ロンドン、次がクリス・コナー、その次がアン・バートン。いまはヘレン・メリルかな」
ジャズ好きの多くがそうであるように、ジャズバー「G」のマスターも1人のミュージシャンにほれこむと、徹底的に聴き込む癖がある。
「それじゃ2代目を呼んできて。注文はフォアローゼズのハイボール」
マスターはためらうことなくクリス・コナーの『バードランドの子守唄』(1953、54年録音)を取り出し、アンプのボリュームを少しだけ上げた。
冒頭のタイトル曲が圧巻だ。ややハスキーで凛とした歌声がストレートに心に突き刺さってくる。ジャケットのイメージ通り、まさに直球勝負の歌。彼女のフレッシュさはバーボンのハイボールによく似合う。
気持ちよく聴いているとドアが開き、初老の男が現れこう言った。
「歩いていたらクリス・コナーの声が聞こえるじゃない。それに釣られちゃったよ」
マスターの口ひげがうれしそうにヒクヒク動いた。(桑原聡)

