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【人、瞬間(ひととき)】あの決断 漫画家・一条ゆかりさん(58)(中) (1/2ページ)
このニュースのトピックス:マンガ
■自分にしか描けないものを描こう
集英社主催の「第1回りぼん新人漫画賞」で準入選となり、本格的な漫画家デビューを果たした。読み切り作品を発表するようになっていたが、やはり連載を持ってみたい。そんなとき、若い編集者から思わぬ依頼を受けた。
「スポーツ漫画、バレーボールの漫画を連載してみませんか」
少年誌では、『巨人の星』や『あしたのジョー』といったスポーツ漫画が人気を集めていた。その編集者は「少女漫画誌でも“スポ根もの”が来る」と踏んだに違いない。
中学生のときは、陸上部とソフトボール部をかけ持ちしていた。スポーツは苦手ではない。それに、夢にまでみた連載が目の前にある。悩んだ。
自分が描きたい世界はたくさんある。でも、スポーツ漫画ではない。スポ根ブームかもしれないが、ブームに乗るだけなら、いつかは終わりがくる。そのとき、漫画家としての自身の可能性も終わってしまうのではないか。
「連載ですよ。こちらは、デビューしたばかりの新人だし、気持ちは揺れますよ。あれこれと考えました。でも最終的に、“描きません”と断っちゃった」。その後、「りぼん」では、井出ちかえさんが『ビバ! バレーボール』を連載し、大人気となった。
「あぁ〜、やっておけばよかったかなぁ…なんて。でも、振り返ってみると、漫画家として、第一の転機だったのかも」
作品が売れなければ意味がない。でも、嫌な仕事をするのは自分らしくない。だから決めた。「自分が描きたい作品、自分にしか描けないものを描こう」

