ニュース: エンタメ RSS feed
【人、瞬間(ひととき)】あの家 漫画家・一条ゆかりさん(58)(上)漫画に夢 中1で決意 (1/2ページ)
祖父は造船関係の事業を成功させ、一代で財を成した。父は2代目の跡取り息子−のはずだったが、絵にかいたような“ボンボン”だった。男前で遊び人のだて男。特技は小粋にビリヤードとマージャン。金銭への執着もない。そのせいかどうか、事業も家計も急速に傾いた。知人の借金の保証人になって、財産は泡のように消えていった。
物心がついたころには、貧乏暮らしだった。
「6人兄姉の末っ子なんですけど、姉たちは乳母がついているようなお嬢様生活。いざ私の番になったら、狭い長屋ぐらし。家族8人で住んでいました。水道もなくて、外の井戸からくんでいた。もちろん、水くみを手伝わされるわけです」
母もこれまたお嬢さん育ちだった。頭も器量もいい。プライドも高い。想定外の貧乏生活。何かにつけて不機嫌で、厳しくて、口うるさかった。兄姉が多い環境もたくましさに磨きをかける。
「《働かざるもの、食うべからず》《手に職をつけて、自立すべし》。子供心に、こう胸に誓っていましたね。まぁ、自然な成り行きです」
七転び八起き−。何度失敗しても、環境に恵まれなくても、奮起する。抜け目なく活発な少女に育った。
■□■
小さなころから、地面に絵を描くことが好きだった。想像だけは際限なく、どこまでも広がっていく。お城やドレス、お姫さま…。華やかな世界を描き続けた。いつしか、通りすがりの人にも「上手」とほめられるようになった。
小学校の卒業文集に、「将来の夢・漫画家」と記した。周囲には笑われたが、中学校1年のときには「漫画家になろう。絶対になる」と意を決していた。
学校では一番前の席に立候補して座った。勉強のためではなく、教壇に立つ教師の“死角”になるから。教科書でノートを隠して漫画を描いた。家でも寝る間を惜しんで創作した。高校に入ってからも、ひたすらに描き続けた。母に小言を言われない程度に、勉学にも手伝いにも励んだ。
「16歳のとき、『雨の子ノンちゃん』という作品を投稿したら、単行本化されたんです。うれしくてページをめくってはニヤニヤしてましたね。そのうちに、雑誌で連載してみたいと思うようになって…」

