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【ウェブ立志篇】米ミューズ・アソシエイツ社長 梅田望夫 SNSと若者の健全さ

2008.9.24 02:50
このニュースのトピックスオバマ次期米大統領

 「貧困の終焉(しゅうえん)」の著者としても知られる米コロンビア大学地球研究所所長ジェフリー・サックス教授の新著「Common Wealth」を読んでいたら、終章に、若い読者を強く意識した8つの提言と出合った。世界の平和と持続可能な発展のために、私たち一人ひとりが個としてすべき行動の提言である。

 これからの世代が直面する挑戦について学び課題を科学的に理解すること、できる限り旅をして世界中の現実を見ること、などと並んだ8項目の一つとして、サックス教授は、ソーシャル・ネットワーキング・サービス(SNS、会員限定の情報交換サイト)の徹底的活用を挙げ、「SNSを通して、持続可能な発展を推進しよう。SNSは社会運動を支援し、普及させていくための最高の道具だ。異なるコミュニティーを、共通の目的のもとに結びつけよう」と訴える。

 「混雑した惑星のための経済学」という副題がつき、地球規模の課題群と解決策が包括的に述べられる本書の中に、SNSの重要な役割が明記されていることは、英語圏ネット空間の雰囲気をじつによくあらわしている。

 インターネットには、あまりコストをかけずとも、たくさんの人々の小さな「努力の成果」や「善意」を、地球規模で集積できるという特質がある。ウェブが進化すれば、世界の難題の解決に、私たち一人ひとりが積極的に参加できる機会が広がるに違いない。そこに未来への希望を感じている若者たちは、とても多い。

 考えや主張を言葉で述べ、それを口コミで広めていくというだけでなく、政治・教育・非営利活動に対して個人が少額の資金を簡単に寄付できる仕組みと文化も、英語圏SNSには深く根付いている。熱帯雨林の保護などのプロジェクトに、数十万人単位の少額の寄付がすぐに集まり、まとまった金額になったりする。ちなみに米大統領選バラク・オバマ民主党候補の資金調達戦略の成功は、こうした層に働きかけたゆえのものだ。

 たとえば、カナダ発のサイト「TakingITGlobal」(テイキング・イット・グローバル)は、グローバルな社会問題に強い関心を抱く若者たちをつなぎ、活動の場を提供するSNSである。世界中から21万人以上の若者が参加し、エイズ問題、教育問題、デジタルデバイド、環境問題といった、多岐にわたる社会問題の解決に向け、ウェブ上で議論を繰り広げている。サックス教授はウェブの可能性を心から信じ、社会問題に敏感な若者たちを身近によく知るゆえに、SNSの役割を、著書の中で強調するのだろう。

 こうした英語圏ネット空間の雰囲気を見ると、私は故・河合隼雄氏が、1990年代にアメリカに短期滞在したときに発したこんな言葉を思いだす。

 〈プリンストン大学に居て、私もアメリカの大学生の「健全さ」に驚いてしまった。そのよしあしはともかくとして、このような「健全な」人たちが、アメリカの中枢に位置していることを日本人は忘れてはならない、と思う。〉(「こころの声を聴く−河合隼雄対話集」 新潮文庫)

 アメリカに住んでいると、日本とは比較にならないほどの格差社会の厳しさに日々矛盾を感ずるとともに若者の「健全さ」について河合氏のような感慨を持つことも多いのである。(うめだ もちお)

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