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【今日の突破口】ジャーナリスト・東谷暁 「埋蔵金」話に浮かれるな
特別会計から「埋蔵金」が見つかったというので、財政赤字が解消されるとか、景気が落ち込んでも赤字国債は不要だなどと論じられている。最初は30兆円だった埋蔵金も、いまや50兆円に膨れ上がり、このままだと、かつてのように使える金が100兆円あるなどといわれるようになるだろう。
その在り処はさまざまだが、政府は隠し金を持っていて、それを使えば経済問題が解決するという話は、今に始まったことではない。1994年には住宅金融専門会社の損失は、東京大学や公務員宿舎などの国有財産を売却すればすぐに補填(ほてん)できるといわれた。98年、不況で税金が物納されるケースが多くなると、これは「国家の焼け太り」で、売却できる国有財産は100兆円を超えていると、嬉々として主張した経済学者もいた。
また、国民から徴収された社会保障基金の約260兆円を計算に入れると、日本の財政赤字は少ないとの指摘も繰り返し登場した。さらに、世界第2位の規模である外為準備金も約110兆円あり、これを元手に国債を発行して年金や医療の問題を解決する案も提示されている。景気後退の中、希望のもてる話ばかりだが、こうした国有財産は、本当に売却したり運用することが可能なのだろうか。
実は、ここには大きな議論の混乱がある。すでに民営化した企業の場合は政府の持ち株を売ることになるが、それが国の政策に支障をきたすか否かは問われていない。また、公的機関による資金運用は一切まかりならぬといって郵政民営化を推進した人たちが、国家ファンドを設立して国も儲(もう)けろと煽(あお)る。さらに、米国のファニーメイやフレディマックが破綻(はたん)しかけると、日本の景気後退などは気にせずに、米国政府を援護するため外為資金から金を回せと主張する人物すら登場している。
しかし、日本の国家財産ことに金融資産が、約580兆円と巨大なことは確かだが、この巨大な資産の存在が、約850兆円もの債務を抱えつつ今も国債が発行できる、最大の根拠となっていることを忘れてはいないだろうか。もし政府が片っ端から国家財産を切り売りし、金融資産をリスクの高いファンドに預け、海外の破綻しかけた機関に投資すれば、「ホームバイアス」が強いといわれる日本の金融機関や個人投資家も、日本国債への考えを変えるだろう。
私は国家ファンドについても賛成派であり、公的機関が資産運用をしてはならないとは思っていない。そもそも、最近の埋蔵金といわれるものの中には、公的機関が資産運用をしたから生まれたものすらある。しかし、いまの埋蔵金騒動や国有財産売却論は、あまりに政争に利用されすぎており、状況しだいで原理や原則もころころと変わってしまうのが現実である。
まず、国有財産を埋蔵金などと呼んで面白おかしく扱うのをやめたい。また、本当に売れるものと売れないものを峻別(しゅんべつ)し、運用可能なものと不可能なものを分類するべきだ。さらに、売却や運用がどこまで国債の利回りに跳ね返ってくるかを精査する必要がある。
もちろん、この峻別や分類および精査については、政治哲学によって大きい違いが出てくるはずだ。しかし、そうなって初めて、国有財産についての真剣な議論が始まる。いまの「埋蔵金」話は、いくら何でも浮かれすぎている。(ひがしたに さとし)

