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【人】「患者に薬を届けて初めて成功」 長久厚さん
米本社の閉鎖方針に立ち向かい、雇用を守るため独立を勝ち取った。ファイザー日本法人の旧中央研究所(愛知県武豊町)は、約70人の社員とともに創薬ベンチャー企業「ラクオリア創薬」として今年7月に再出発を果たした。
閉鎖告知は平成18年末。主力製品の特許切れに伴い、ファイザーはグループ社員の1割削減などを決めた。世界の研究拠点を9カ所から4カ所に縮小する計画に日本も組み込まれた。
その1カ月前には米本社から「開発成績のいい中央研究所員を100人増やす」と拡大路線が伝えられたばかり。所員からは「経営陣は残れるからいいが、おれたちはどうなるんだ」と批判の声が上がった。
このため、生き残りをかけてファイザーから独立することを決意し、19年3月にジェフリー・キンドラー会長に直談判した。「すでにウォールストリートには情報開示した。再考の余地はない」と拒絶されたが、ねばった末に「才能ある研究者が残るなら、できる限り支援する」という言質を得た。
それでも不安は残った。製薬企業の生命線である新薬候補をファイザーが外に出す事態は前代未聞のこと。交渉は難航も予想された。「本当に社員がついてきてくれるだろうか」との気持ちで胸に帰国すると、そこで待ち受けていたのは、希望に満ちた社員の顔。有能な100人が独立してもついていくと答え、思いは通じたと確信した。
「目指すのは文献のための科学的研究ではない。患者に薬を届けて初めて成功といえる」
新会社は消化器分野などの有望な新薬候補物質を探し、それを国内外の製薬会社にライセンス供与することを目指す。「失敗したらボーナスではなく、会社がなくなる」と笑った。(飯田耕司)
ながひさ・あつし 神奈川県鎌倉市出身。昭和59年、マサチューセッツ工科大学院生化学研究科修了。米ファイザー入社、平成12年、取締役中央研究所長。20年7月よりラクオリア創薬社長。愛知医科大学の客員教授も務める。

