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【正論】究極の防衛策「株式持ち合い」 神戸大学教授・加護野忠男 (1/3ページ)
日本で不可欠な企業戦略
企業の買収防衛策をめぐって専門家の間で意見が分かれている。以前にもこの正論欄に書いたように、日本企業にとって乱用的株主からの企業防衛は不可欠である。日本の場合、優良企業は潤沢な留保利益をため込んでいるため乱用的買収者に狙われやすいこと、乱用的買収の制限のための社会的な制度整備が不十分なことなどから、個別企業レベルで買収防衛策を導入し、企業防衛を行わなければならなくなっているからだ。
最近の日本企業で標準的な企業防衛策となっているのは、株式を通じた買収防衛策である。乱用的株主から買収をしかけられた場合に、一般株主に新株予約権を無償で発行し、買収コストを高めるという方法である。この方法はアメリカで考え出されたもので、日本の上場企業の500社超がすでに導入している。
最近、経済産業省の企業価値研究会が、この制度の運用に関して新しいガイドラインを示した。そこでの重要な判断基準となっているのは、株主共同の利益である。このガイドラインに従うとすれば、現在の買収防衛策は効力を発揮しにくくなる。法律論として、株主の利益を第一におかざるを得ないのは分かる。しかし、日本の現実論としては、ステークホールダー(利害関係者)の利益も無視できないということを忘れてはならない。
長期取引を重視する傾向
企業は、株主だけでなく、従業員、取引パートナー、債権者、地域社会など多様なステークホールダーの協働によって社会的に有用な価値を生み出す場である。企業はその価値に対する対価を顧客から受け取り、それをステークホールダーに分配することによってステークホールダーの協力を引き出すことができる。株主は、その残余としての利益を受け取る。その意味で株主は弱い存在である。そのため株主には、有限責任という責任には不釣合いなほど大きな権利が与えられている。配当を受け取る権利だけでなく、経営者の任免権を含む企業の支配権が与えられている。不釣合いといってよいほどに大きな権利が与えられているがゆえに、その権利を乱用しようとする株主がでてくるのだ。