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【わが道わが友】宇宙航空研究開発機構理事長・立川敬二氏(5)
■宇宙開発こそ国際協調の最先端を実現
宇宙航空研究開発機構(JAXA)理事長の候補に私の名前が挙がったのは、宇宙開発委員会の委員を務めていたためだと思う。平成16年10月に、文部科学事務次官(当時)の御手洗(みたらい)康さんから理事長就任を要請された。
電電公社入社以来、NTTドコモの社長まで務め、十分に働いたと思っていたので、その場はお断りしたが、御手洗さんに「よく考えてくれ」と言われて迷ったあげく、「最後に、もうひと働きするのもいいかな」と思い直し、お引き受けすることにした。相談役の私がいると、ドコモの社長がやりにくいだろうとも考えた。
翌月、理事長に就任して驚いたのは、外国人との付き合いが頻繁にあることだ。これまでもさんざん外国人と付き合ってきたが、私の経験したことのない世界の人たちとの新しい出会いが始まった。
着任1週間後に、イタリア宇宙機関との協力に関する共同声明に調印するため、駐日イタリア大使公邸を訪問。年が明けた1月には、米国、ロシア、欧州、カナダ、日本の宇宙機関のトップで構成する「宇宙機関長会議」に出席するため、カナダに出張するといった具合だ。
そのカナダ出張の帰りに米ヒューストンの宇宙センターに立ち寄り、宇宙飛行士らといろいろな話をした。ちょうど2年前に起きたスペースシャトル「コロンビア号」事故の追悼式が行われていたうえに、彼らとの会話も、知らない単語が多くて難しかった。正直、「大変なところに来たな」と思った。
理事長就任当時のJAXAの課題は、国産大型ロケット「H2A」6号機の打ち上げ失敗からどう立ち直るかだった。打ち上げに失敗したのはJAXAが発足して1カ月後の15年11月のこと。組織としての体裁を整える間もないうちの出来事だった。
そこで私は経営理念やビジョンを作り、それを基に長期計画も策定した。体調を崩して退任した前任者が段取りしてあったのを、私が具体化した。職員の努力のかいもあり、17年2月に多目的衛星「ひまわり6号」を搭載したH2A7号機の打ち上げに成功して以来、科学衛星打ち上げ用ロケットのM5(ミューファイブ)も含めて合計11機、すべて順調に推移している。
今、実感しているのは、宇宙開発こそ最も国際協調が進んでいる分野だということだ。その最たるものが国際宇宙ステーション(ISS)で、米露をはじめ15カ国が参加している。ISS建設計画ができてから20年になるが、この間、参加国の間に紛争はない。ISSへの投資は年間1兆円程度。日本はそのうち約400億円だ。それで平和が買えるなら、安いものだろう。何よりも悠久の宇宙に思いをはせれば、人間同士の争いなどむなしくなるはずだ。(原誠)
※次回9日からは太平洋セメント会長の鮫島章男(ふみお)氏です。

