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【正論】創造的な基礎研究で産業再生を 首都大学東京学長・西澤潤一 (1/3ページ)
先を見据えた対応できず
ちょっと上向いていた景気も下降を始めていると報ぜられている。日本の経済力について考えさせられるこのごろだが、いまに至る日本の産業界の下降傾向は、70半ばを過ぎた我々の同級生たちが定年を迎えた頃から始まったようである。
それは、生産手法を次第に切り換えていくための新製品の開発や工業化に十分な対応がとり切れなかった事にあったと思う。東南アジアの科学技術の水準の向上に対応し、廉価な工業生産人口を確保する必要に迫られて、海外への生産工場、それに伴う技術の移転が避けられない状態になってしまっていたのである。
その前のオイルショック、つまり、産油国が一致して行動した石油の値上げ戦術の時には、我が国の対応は科学技術の力を活用して工業生産自動化を行い、生産の精度、歩留まり、費用などの特性を向上させて、見事に日本の工業を守り抜いたのだった。
実はこの時に歪(ゆが)みが出ていたのである。本来なら、次の開発の目標を定め、展開しておくべきだったのだ。然るに、このような分野の開発目標を定める先行開発が、終戦以来の古典的なもので牛耳られていて変わることができない状況であった。例の年金制度の場合もこのころ、事務的にも崩壊するほど杜撰(ずさん)なものになり、定式化が一気に崩壊し始めていたことが明らかになった。最近の舛添要一大臣の努力を以てしても完全回復は不可能なのではないかと心配になる程のものである。
技術援助にも思慮を欠く
当時、私も含めて、世界の後発諸国が一人前になる見込みの立つまでは力を貸すのが、資源もない状態で専ら貿易によって立国を計り、思いもかけぬ大成功を収めた日本としての心意気というか、情というものであろうと考えていた。日本が米国からの技術提供によって思いもかけぬ早さで戦後の回復に成功したこともあり、学会活動を通して人類の安全な成長を念頭において研究や教育を国際的に展開してきた。

