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【ドラマ・企業攻防】精神的支柱を失った富士通の今後 (1/3ページ)
「65歳になって自分の人生を歩みたいと思った。会社と縁を切りたい」
壇上で議長役を務める社長が、大勢の株主を前に、あろうことか“縁切り”を宣言した。前代未聞の出来事に違いない。
6月23日午前、横浜市で行われた富士通の株主総会。発言者は黒川博昭社長(65)。就任から丸5年。この日をもって会長にも就かず、相談役に退く。黒川社長は業績を悪化させて会社を追われる経営者ではない。反対に、平成20年3月期決算で富士通を営業利益2000億円超を稼ぐまでに復活させた立役者だ。
株主は驚いた。だが、「経営を投げ出すのか」「無責任だ」といった非難は起きず、代わりに退任を惜しむかのように静かな拍手が巻き起こった。日本のIT業界を代表する企業、富士通の改革。株主は、燃焼し尽くした黒川社長の5年の苦労を知るだけに、異例の“縁切り”発言を素直に受け入れたのだろう。
なぜ、黒川社長は会社と縁を切りたいなどといわねばならなかったか。
■絶好調から転落
黒川社長が就任した15年6月当時、富士通は未曾有の業績悪化にあえいでいた。ITバブル崩壊に見舞われた14年3月期の最終赤字は3825億円、翌15年3月期も1220億円と連続で巨額の赤字を計上。ライバル企業が「V字回復」を成し遂げる中、富士通はひとり取り残された。
今から約10年前、ITブームに沸いたころの富士通の業績は絶好調だった。「IT革命」で企業や個人のコンピュータや情報通信需要が急拡大、13年3月期に富士通の営業利益は2440億円をたたき出す。
当時のトップは、カリスマ経営者の秋草直之社長。米IBMを追撃するソリューションビジネスへの体質転換や、「成果主義」をいち早く導入するグローバルスタンダード経営を旗印に、ソニーの出井伸之CEO(同)らと並ぶ“時代の寵児”だった。
高品質、多機能、価格競争力をもつ製品で世界市場を席巻した日本の電機メーカーだが、半導体や液晶パネルなど電子デバイス分野で韓国、台湾勢の台頭を許し、インターネット事業では欧米企業に先行された。
高収益の道は、他の追随を許さぬキラープロダクトに特化するか、サービスとブランド力で差別化するしかないとされた。
東芝は、NAND型フラッシュメモリーという虎の子のデバイスで世界に戦いを仕掛け、三菱電機は産業用ファクトリーオートメーション(FA)に活路を見いだした。
富士通は、システム構築サービスで果敢にグローバル化に乗り出し、NECらライバル企業を引き離しに動いた。だが、このグローバル化が裏目に。折り悪くITバブルの崩壊が直撃し、被害を広げる結果につながった。しかも打つ手が遅れ、負け組に転落した。
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