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【週末読む、観る】(3)和田竜さんが出会った本『竜馬がゆく』 (1/3ページ)
【この本と出会った】作家、和田竜さん
司馬遼太郎著『竜馬がゆく』(文春文庫)
司馬遼太郎の『竜馬がゆく』を読んだのは、大学2年生、20歳の夏のことだった。
僕の「竜(りょう)」という名前は本名なのだが、これは坂本竜馬好きの僕の母親が、竜馬にちなんで付けた名前だ。小さいころにそう聞かされた。
「だからお前は大器晩成なんだぞ」
母親はそう僕に言い続けてきたが、最近では諦(あきら)めたのか、もう大器も晩成も言わなくなった。インタビューなどでもよく名前について聞かれるが、その際に言われるのが、「お母さんは『竜馬がゆく』を読んでいたのですか」という質問だ。僕も知らなかったので、最近になって母親に聞いてみると、「読んでないよ」という驚愕(きようがく)の返事。いいかげんな名前の付け方をしたものだ。間(馬)が抜けているとはこのことか。
さて、『竜馬がゆく』を読んだのは、大学の夏休みがあまりにもヒマだったので、「自分の名前の元ネタの小説でも読んでみるか」という軽い気持ちからであった。僕はその時まで、小説もろくに読まない人間だったので、大学近くの書店でパラパラとページをめくり、「何か余白も結構あって、読みやすそう」という甚だ情けない理由も手伝って購入したような記憶がある。
読むと、まさに衝撃であった。
(昔の日本人ってこうだったんだ)
僕が大学生のころの日本人は、エコノミックアニマルと揶揄(やゆ)され、皆同じねずみ色のスーツを着ているとばかにされることしきりであった。僕は日本人でいることが、恥ずかしいような気さえしていた。
『竜馬がゆく』を読むと、昔の日本人が持つ、現在とは正反対とも言える気質に興味を持った。剽悍(ひょうかん)で、荒っぽく、異様なまでに誇り高い。その興味を僕は現在も持ち続け、戦国物を書く大きな原動力になっている。
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わだ・りょう 昭和44年、大阪府生まれ。早稲田大政治経済学部卒。デビュー作『のぼうの城』が第139回直木賞候補作に。本作と同内容の脚本「忍ぶの城」で第29回城戸賞受賞。ほかに『忍びの国』。
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『竜馬がゆく』は、昭和37年6月から41年5月まで産経新聞夕刊に連載された、司馬遼太郎の代表作。新しい日本を築くべく奔走した若き志士の奮迅ぶりは、いまなお多くの読者を引きつける。また多くの政治家、経営者らの座右の書となっている。