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【週末読む、観る】(1)『総特集・赤塚不二夫』『学歴・階級・軍隊』『あんまりな名前』ほか (1/5ページ)

2008.9.7 09:45
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【大書評】『学歴・階級・軍隊』高田里恵子著(中公新書・924円)

評・竹内洋(関西大教授)

 いまから40数年前、わたしがある企業に入社して半年の研修が終わったとき。同じ課に配属されることになった同期の友人が、わたしにささやいた。「おれたちがいく課の高卒係長に気をつけたほうがいい。新入りの大卒をいじめるそうだから」と。

 配属されてみて、たしかに、と思えるところはあった。しかしこの係長は、学力が不足したから大学進学できなかったわけではない。彼が高校を卒業するころの日本は貧しい社会。経済的事情で進学できなかっただけのはずだから。

 そんな彼からみて、仕事の能力も疑わしい輩(やから)が大卒というだけで、ちゃらちゃらし、高卒女子社員からは「正しい」結婚相手と思われているのが腹立たしかったのだろう。いまにしてそう思う。

 学歴が異なっている者が出会う場は、職場だけではない。かつての軍隊がそうである。高学歴者が無学な庶民から「ここは学校じゃないんだ。もっと気合を入れろ」と殴られたという話は、読んだり、聞いたりすることが多い。

 本書は、高学歴兵士の帝国陸軍でのそんな経験を小説や映画、体験記から掬(すく)いあげる。

 大正時代までは徴兵率が低いから高学歴者のなかでも屈強な者が軍隊経験をした。ところが、昭和10年代は、徴兵率があがり、ひ弱な高学歴兵士が多くなった。このことが高学歴兵士いじめに関係しているという指摘に蒙(もう)が啓(ひら)かれた。

 なるほど、先ほどの高卒係長のいじわるは、大学進学率があがり、猫も杓子(しゃくし)も大学生の時代がはじまったときである。高卒係長が新入社員のころは、大卒は少数で実力も備わっていた。しかし、大衆大学化のはじまりで「このごろの大卒は…」と高卒係長は思ったのだろう。

 帝国陸軍をフィールドに日本人にとっての学歴の意味をあぶりだす着眼点が鋭い。同時に日本社会における学歴優越感と学歴コンプレックス、軋轢(あつれき)を抉(えぐ)って秀逸である。

         ◇

 たかだ・りえこ 桃山学院大経営学部教授。昭和33年、神奈川県生まれ。

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