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【週末読む、観る】(4)『現代史の虚実』秦郁彦著ほか (1/4ページ)

2008.8.31 09:10
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 【旬を読む】現代史研究者 大杉一雄

 『現代史の虚実』秦郁彦著(文芸春秋・1800円)

 

沖縄戦の実態を再検分する

 現代史研究の第一人者である、秦郁彦氏の最近の問題についての論集である。氏の実証的な現代史の分析は、イデオロギー過剰な伝統的学派と異なり説得力に富み、しかもたえず現実の問題に挑戦してゆくところに真骨頂があるようだ。本書も沖縄集団自決、富田メモ、皇室問題、慰安婦・フェミニズムなどを扱うほか、その他の問題についてのエッセーを収録している。その中で氏が昭和26年大学に入学、1年休学までして生き残りの戦争責任者からヒアリングをし、延べ百数十人に達したと述べているのは、その時代の雰囲気を考えると驚きである。

 冒頭の「大江健三郎『沖縄ノート』裁判の行方」は、大江氏が上記著作において、沖縄の集団自決は軍の命令によるとし、当時の守備隊長を極端な表現で非難していることに対し、隊長(90歳)ともう1人の隊長の遺族が名誉棄損として訴えた裁判である。3月28日の第1審では上告は棄却されたが、原告は上告中。原告側にたつ秦氏は裁判を傍聴し判決について厳しく批判している。「罪の巨魁」というレトリックの解釈などはさておき、たしかに、判決理由や軍命令の有無をあいまいにしている点など、納得し難いところがある。

 しかし本論文は裁判の経過報告というより「集団自決問題を通じて沖縄戦とは何だったのかを再検分してみるのが主旨」となっており、読者は戦闘の発端から悲劇的な事実関係までを各種資料とともに知ることができる。悲惨さの余り、あるいは敬遠されているかもしれない沖縄戦の実態を、とくに若い人々に知ってもらうのに、格好の教材となろう。もちろん秦氏と異なる見方もあるので、本書を機に裁判の経過にも注目しながら、戦争、現代史のあり方を考えるよすがとなればよいと思う。

 本書では簡単な紹介となっているが、氏には盧溝橋事件の第一発が日本軍からではなく、中国第29軍兵士からの発砲であったことの実証的研究があり、すでにこれは学界での定説となっている。また真珠湾攻撃に関し、ルーズベルト陰謀説を否定していることは、評者もまったく同意見である。ただ日米交渉で原理原則にこだわり、首脳会談を拒否し、暫定協定案も破棄して、譲歩を重ねてきた日本をついに開戦に追い込んだ米国にも責任があり、戦争責任は日米双方にあるのではないか。

 おおすぎ・かずお 大正14年、北海道生まれ。東京大学卒。日本開発銀行などに勤務。著書に『日中戦争への道』など。

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