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【青雲の大和】(291)巨船が行く (1/2ページ)

2008.8.26 03:20
このニュースのトピックス青雲の大和

 文麻呂(ふみのまろ)のことばが終わらないさきに、秦(はた)は決断していた。

「よし、わかった、やめよう」

 いうや、水夫(かこ)の長(おさ)をよびよせ、

「風島(ふうとう)上陸はとりやめる。船をもとの針路にもどしてくれ」

 と、指示した。

 黙ってうなずいた水夫の長は、艫(とも)に立つ操舵手にむかって、手をふりながら大声で、

「取舵(とりかじ)だ、取舵、もとへもどせ」

 と命じたうえ、自身は櫓(ろ)を漕ぐべく舷側へ走った。

 船は大きく瀬戸のなかほどへむかって舵を切っていく。

「なんだ、なんだ、中止だと?」

 上陸をまえに、二十人の兵に指示をあたえていた雄君(おきみ)が、不服そうにもどってきて、突っかかるようにいった。

「いまになって、秦どの、これはいったい、どういうことですか」

「どうもこうもない、上陸作戦は中止する」

「だから、なぜだというんです」

「われら大義ある大和の者は、民を苦しめることは決してしない。わかったか」

「わからんですな。島を乗っとっても民を苦しめるようなことは、おれ、兵にさせませんよ」

「では、あれをみよ」

 秦はそういって、丘のうえにならんでいる島民たちの姿を指さした。

「ほほう、手をふっていますな」

 雄君ははじめて気づいたか、眼をなごませていった。

「あの手をふっている無垢(むく)な民の地を、おまえ、侵せるか」

「だから、侵しませんよ、おれは」

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