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【青雲の大和】(291)巨船が行く (1/2ページ)
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文麻呂(ふみのまろ)のことばが終わらないさきに、秦(はた)は決断していた。
「よし、わかった、やめよう」
いうや、水夫(かこ)の長(おさ)をよびよせ、
「風島(ふうとう)上陸はとりやめる。船をもとの針路にもどしてくれ」
と、指示した。
黙ってうなずいた水夫の長は、艫(とも)に立つ操舵手にむかって、手をふりながら大声で、
「取舵(とりかじ)だ、取舵、もとへもどせ」
と命じたうえ、自身は櫓(ろ)を漕ぐべく舷側へ走った。
船は大きく瀬戸のなかほどへむかって舵を切っていく。
「なんだ、なんだ、中止だと?」
上陸をまえに、二十人の兵に指示をあたえていた雄君(おきみ)が、不服そうにもどってきて、突っかかるようにいった。
「いまになって、秦どの、これはいったい、どういうことですか」
「どうもこうもない、上陸作戦は中止する」
「だから、なぜだというんです」
「われら大義ある大和の者は、民を苦しめることは決してしない。わかったか」
「わからんですな。島を乗っとっても民を苦しめるようなことは、おれ、兵にさせませんよ」
「では、あれをみよ」
秦はそういって、丘のうえにならんでいる島民たちの姿を指さした。
「ほほう、手をふっていますな」
雄君ははじめて気づいたか、眼をなごませていった。
「あの手をふっている無垢(むく)な民の地を、おまえ、侵せるか」
「だから、侵しませんよ、おれは」