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【青雲の大和】(288)巨船が行く (1/2ページ)
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船は舵(かじ)を切り、はるかに旧任那(みまな)の山影をみながら新羅(しらぎ)の王城に近い海岸をめざして進んでいく。
天を突く二本の柱の帆いっぱいに追い風をうけ、潮もいまはゆるやかに北へ流れているようである。
櫓(ろ)をこぐ水夫(かこ)の力づよい掛け声がひびき、巨船が心地よく加速しはじめたとき、それまで秦(はた)の決意をみくびっていた知万(ちま)が、あわてて再度の話しあいをもとめてきた。
「じつは、秦氏に言いそびれておりましたがね」
知万は船倉のまえで、隠しもっているものを小出しにするように話しはじめた。
「長年にわたって、われわれは貴国に調(みつぎ)をはこんできましたよね。しかし、唐の庇護をうけることが決まったからには、今回かぎりで貴国への調はやめる、ということを上臣(じょうしん)の指示で決めてきたんですよ」
「なにをいうか」
秦は絶句し、ついで怒鳴りつけた。
調はいわば宗主国への朝貢で、これをやめるということは、これまでの大和と新羅の関係を断ち切ることを意味している。
そのうえ、十人の使者全員が唐の役人の服をみせびらかすように着用してきているのである。
−−これこのとおり唐の支配下にはいったゆえ、大和への朝貢はこれで終わりとする。
と、もうしわたしにきたにひとしい。
「爾国(じこく)新羅がその気であれば、よろしい」
秦は一瞬の動揺から立ちなおっていった。
「われらはただちに兵数万を動員し、これから上陸する島を拠点として爾国を攻めつづけるであろう。むろん百済(くだら)、高句麗(こうくり)はわが大和に呼応して進攻を開始する。爾国新羅は即、滅亡である。それでもよいというなら、そうすればよいではないか」