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【週末読む、観る】(4)『七つの人形の恋物語』ほか (3/4ページ)
■友人に借りた忘れがたい本
別れがたい本だった。
自分のものではないのがとても残念で、なのに私が所有しては申し訳ないような気もした。
友人の親の書棚でこの本を見つけて、勇気を出して借りたいと願い出たのは中学生の頃。『七つの人形の恋物語』−童話のようなタイトルに惹(ひ)かれたのかもしれない。確かに、ロマンチックな恋物語ではある。けれど、読み進むにつれ、なんともいえない切なさに胸がつまった。
主人公の、ムーシュ(蠅)はまだ22歳だというのに、生きることをあきらめセーヌ河に身を投げようとしている。物語はそこからはじまるのだ。
そんなムーシュに声をかけたのは“にんじん”。人形芝居小屋の人形だった。それから次々と、個性豊かな人形たちが現れてムーシュの心に光を、もう一度生きる力を与えていく。
当然のことだが、人形たちを動かしているのは“人間”なのだ。作者のギャリコははじめから手のうちをさらしてくれているというのに、私もムーシュと同じようにその人形使いの存在をすっかり忘れてしまう。だて男だが、寡黙で冷酷なミシェル。やさしさのかけらもないその男が、どうしてもさまざまな感情を持った7人の人形たちと重ならない。
ムーシュと一体になって、私も傷つき混乱し、本を閉じて何度も嘆息した。
愛するという気持ちは、なんと美しくてとりとめがないのだろう。そして、男の人とはなんて複雑で哀(かな)しいのだろう−その遥(はる)かな頂を仰ぐような想(おも)いは今も変わらない。
この本が借りた古い本で、もう手に入らないことが、いっそうこの不思議な恋物語を神秘的にしていたが、復刻されていたことを知った。復活もまたムーシュたちの恋にふさわしい。
一人の人間の中には何人の“人形”が棲(す)んでいるのだろう。恋することがいっそう愛(いと)おしくなってくる。
〈メモ〉なぎた・けいこ 昭和24年、東京都生まれ。文化学院卒。著書に「ふーことユーレイ」シリーズ(全14巻)など。『レネット 金色の林檎』で日本児童文芸家協会賞。
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ポール・ギャリコ(1976年没)は1897年、ニューヨーク生まれの作家。1954年に発表した『七つの人形の恋物語』では、多重人格者の分裂した一つ一つの人格にそれぞれの生き方を認め、共有することを一つのあり方として、早い時代から見据えている。