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【週末読む、観る】(3)『人くい鬼モーリス』ほか (2/4ページ)
終わりに近いところでドストエフスキーの臨終が描かれる。大作家を否定したくてもし切れないツィプキンにとって、どうしても書かなければならなかった場面だろう。ドストエフスキーを追った旅が、終わったのだ。
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たなか・しんや 昭和47年、山口県下関市生まれ。平成17年にデビュー。今年、川端康成賞と三島由紀夫賞をW受賞。
【児童書書評】『人くい鬼モーリス』松尾由美著(理論社・1470円)
評・風間賢二(翻訳家)
■思春期の少女の微妙な心
本書は、夢と空想の代名詞である非合理的なファンタジーと知と理性のかたまりである合理的なミステリーといった、いわば水と油のジャンルがみごとに融合された作品である。
高校2年の夏休み、信乃は家庭教師のアルバイト先の人里離れた別荘地へやってくる。相手の生徒は10歳の超美少女。ところがこの子、わがままで小生意気で、かなりてこずりそう。と思っていた矢先、問題の女の子に、こともあろうに“人くい鬼”を紹介される。いわゆる“人食い鬼”とちがうのは、生きている人間には危害を加えないし、また大人には見えないからだ。ただし、死んだばかりの人の魂を餌として吸い取り、残った肉体を消滅させてしまうという。生きている人間を食べないといわれても、その異形の姿を見るかぎりでは信じられない。そんな信乃の疑念を裏づけるかのように、別荘地でたてつづけに人が殺害され、死体が消滅するという事件が発生。10歳の美少女は、“人くい鬼”のしわざではないと主張するが、となると真犯人は…?
本書の読みどころは、子供(美少女)の論理と大人(警察)の論理との間を揺れ動く信乃の推理を通じて語られる、少女から大人へ成長する思春期の微妙な心の綾である。ただし、読者対象がヤングアダルトのため、凝ったトリックや驚天動地のドンデン返しが売りの本格推理マニアにはものたりないかもしれない。
しかし中高生向けとはいえ、ミルンの『プー横丁にたった家』のラストのシーン、あるいはトラヴァースの『風にのってきたメアリー・ポピンズ』で語られる「赤ちゃんのときはトリや木や風や日光や星などが話す言葉がわかっていた」というエピソードに接したときにも似た甘く切ない読後感は万人向けである。
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まつお・ゆみ 昭和35年、石川県生まれ。『安楽椅子探偵アーチー』シリーズほか著書多数。