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【週末読む、観る】(2)『日本から一番遠いニッポン』ほか (3/4ページ)

2008.8.3 08:33
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 みろく・ただし 昭和43年、東京都生まれ。カウンターテナー歌手。

 【書評】『なぜ君は絶望と闘えたのか』門田隆将著(新潮社・1365円)

 評・祝康成(作家)

 ■母子殺害事件の夫の怒り

 なぜ、こんなに強いのだろう。テレビ画面で彼の姿を目にする度に感嘆したのは評者一人ではないはず。

 平成11年に発生した山口県光市母子殺害事件。18歳の少年に妻と幼い娘(生後11カ月)を殺された本村洋さん(当時23歳)は、常に毅然(きぜん)とした態度で取材に応じ、極刑を臨む胸の裡(うち)と司法への疑問を述べてきた。周知の通り裁判は今年4月、最高裁による高裁への差し戻し審で死刑判決が下され、一応の決着をみた。

 本書は、本村さんの苛烈(かれつ)な生き様に焦点を当て、同時に司法制度の欺瞞(ぎまん)を炙(あぶ)り出す、慟哭(どうこく)と怒りの書である。9年間にわたる取材を通して固い信頼関係を築いた著者は、テレビ画面からは伝わらない、本村さんの生の姿を書き記していく。

 冒頭、初めての取材の席で、23歳の青年が怒りを爆発させるシーンは強烈だ。「僕は、絶対に殺します」。拳(こぶし)を握り締めて決意を吐露する姿は、修羅そのものである。

 極刑を望む遺族に対し、司法は非情だ。少年法のもと、手厚く守られた犯人は増長し、反省のかけらも見せない。絶望した本村さんは自殺を決意し、遺書をしたためる。本村さんの心の襞(ひだ)に分け入るかのような徹底した取材が描き出す、その迫力は無類だ。

 愛する妻の死体を発見した際の衝撃、容疑者扱いの事情聴取、家族を守れなかった悔恨、母子を愚弄(ぐろう)する少年の言動……本村さんはいつ自殺してもおかしくなかった。が、死の縁を歩くがごとき孤独な闘いをサポートした人々がいた。いつしか世論が動き、司法の扉が開き始める。われわれが目にする本村さんの毅然たる姿の背後には、必死に闘う青年を支える人々の姿があったことが分かる。

 死刑判決が出た翌日、著者は拘置所へと赴く。そこには意外な光景が待っていた。辣腕(らつわん)ジャーナリストの著者をも唸(うな)らせた犯人の姿に、読者は息をのむはず。生きること、愛することの意味を問い直す、骨太のノンフィクションである。

 かどた・りゅうしょう 昭和33年、高知県生まれ。中央大卒。著書に『ハンカチ王子と老エース』など。

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