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【週末読む、観る】(2)『日本から一番遠いニッポン』ほか (2/4ページ)

2008.8.3 08:33
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 みやま・たかし 昭和36年、神奈川県生まれ。

 【書評】『イタリア貴族養成講座』彌勒忠史著(集英社新書・735円)

 評・浅子啓子(アートコラボレーター)

 ■セレブは1日にしてならず

 ルネサンス最盛期の16世紀イタリア。かの地で栄えた宮廷文化は華麗かつ優雅であり、洗練をきわめたものだった。この時代に生きた貴族たちのたしなみを紹介することにより、周囲からも一目置かれる上品な人間を養成する−本書はそれを目的として書かれたものである。

 著者は当時のヨーロッパでベストセラーとなった2冊の本−カスティリオーネの『宮廷人』とメッシスブーゴの『饗宴(きょうえん)』−から多くを引用しながら、ルネサンス宮廷文化の中心としてフィレンツェのメディチ家をもしのぐ存在だった、フェッラーラのエステ家をはじめとする名家の貴族たちの日常を詳述する。

 それは驚くべきものだった。真の宮廷人たる彼らは、才能ある芸術家を擁護するだけでなく、一流のマエストロの指導を受け、歌、踊り、詩作、作曲、楽器演奏などの芸術を一通りたしなんでいた。加えて外国の賓客を招いての絢爛(けんらん)豪華な正餐(せいさん)・晩餐の宴を立派に主催する能力をも身につけていたのである。このことは単なる個人的楽しみにとどまらず、多分に政治的な意味合いも持っていた。すなわち国の威信をかけたパフォーマンスとしての宴において、日頃の精進のたまものである教養を総動員させて自国の力と富を見せつけ、相手の侵略への野心を牽制(けんせい)するためである。代々培(つちか)われてきた芸術的素地と高い教養に裏打ちされた外交・政治力があればこそ、彼らは歴史の荒波をかいくぐり、脈々と存続することができたのだ。ローマは一日にしてならず。本物のセレブリティへの道は遠い。

 著者は言っている。「ナポリのサルトで仕立てたスーツにボローニャでオーダーした靴……とオシャレに夢中になるのは結構だが、中身が伴わなければお里が知れる」。ブランド品で身を飾り立てるより先に、まずはそれにふさわしい知的でノーブルな人間を目指すことこそ肝要だ。ルネサンス貴族のたしなみは、われわれ現代人にさまざまなことを教えてくれる。

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