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【正論】「心理学用語」の誤った使い方 犯罪心理学者・聖学院大学客員教授 作田明 (1/3ページ)

2008.9.30 03:43
このニュースのトピックス強盗事件

福田退陣と「デジャヴ」

 福田康夫総理大臣が辞職を発表したときに、多くの人々が1年前の安倍晋三総理の辞任に言及し、「デジャヴ」という言葉を用いてその驚きを表現していた。

 ところで「デジャヴ」とは既視感とも言い、全く新しい未経験の情景を「既に一度視たことがある」という感じで体験することを指している。従ってこの感覚は「再認の追想錯誤」(E・クレペリン)とも言うべきものであって、単なる回想や、過去の体験への連想とは全く異なる精神現象である。今回の総理大臣辞職にあたって多くの人々がこの言葉を用いていたのは全くの誤用であった。

 精神医学もしくは心理学用語が誤って用いられることはよくある。たとえば性嗜好(しこう)異常の中にフェティシズムという言葉がある。これは生命のない対象物の使用に関して用いられる用語であり、アメリカ精神医学会の診断基準(DSM−IV−TR)によれば、「少なくとも6カ月間にわたり、生命のない対象物(たとえば女性の下着や靴など)の使用に関する、強烈な性的に興奮する空想、性的衝動、または行動が反復する」ことを言う。

 フェティシズムのために下着窃盗などの犯罪に至ることがあり問題となる。世の中には、おそらくは「物事に対する異常なこだわり」という意味あいからか、「仕事フェチ」(仕事ばかりしている、つまりワーカホリックの傾向を言うらしい)「スポーツフェチ」などと勝手な造語を用いている人もいる。この場合は「仕事依存症」「スポーツ依存症」などと言った方が良いだろう。

一般に広がったPTSD

 一般にも良く知られた障害が誤って理解されていることがある。たとえばPTSD(心的外傷後ストレス障害)は、危うく死にそうになったり、大けがをしそうになったり、あるいはそうした出来事を目撃したりするなど、極度に外傷的なストレス因子にさらされることによって症状が出現してくる。

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