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【聖地巡礼】江の島(上)伝説生んだ神秘性 (1/2ページ)
《遠くにボンヤリ寝てる》って、こういうことなんだな…。
夜の海にグレーのシルエットがうっすらと浮かぶ。決して存在を誇示することはない。灯台の明かりも、どこか控えめに瞬いているように感じられる。
8月24日、午後7時前。茅ヶ崎から見る江の島(神奈川県藤沢市)の印象は、300インチの大画面に映し出されたサザンオールスターズが歌う「夏をあきらめて」の歌詞そのものだった。
活動休止を発表したサザンの“お別れライブ”を、雨が降りしきるサザンビーチちがさきで見た。茅ヶ崎商工会議所の有志が企画したパブリックビューイングだ。
「勝手にシンドバッド」「HOTEL PACIFIC」…江の島が歌詞に出るたび、画面のはるか後方にある島を見やる。民放のお天気カメラとは逆のアングルが新鮮で、何度見ても飽きない。
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サザンが繰り返し歌い、家族連れやカップルが集う湘南のシンボル。江の島の何が人を引きつけるのだろう? 時間をかけて島を歩いてみよう、と思ったのはそんな疑問がきっかけだった。
が、連日の雷雨。「どうせなら晴れた日に」なんて思っていたら、取材日は8月の最終日にずれ込んでしまった。片瀬海岸に並ぶ海の家も寂しげ。
「もう夏休みも終わりですから。雨の後で残念ながら富士山も見えませんね」
ボランティアグループ、江の島・藤沢ガイドクラブ会長の座光寺富雄さん(73)が島まで同行してくれた。
江の島は周囲約4キロほどの島だ。鎌倉時代の絵巻物「江島縁起」によれば、欽明天皇13年(552年)に起こった10日間におよぶ大地震の後、突然海上に姿を現した。これに五頭龍の伝説などが加わり、島の誕生記は神秘性が強調されている。あくまで伝説に過ぎない。だが、伝説が生まれるには、それなりの理由がある。
江の島は歴史上、隆起現象を繰り返してきた。関東大震災でも1メートルほど隆起したとされ、そのとき姿を現した岩場は今、海釣り客の格好のポイントになっている。
もう一つ、興味深いのは、干潮時には藤沢市の片瀬海岸と砂州でつながる陸繋島であること。橋がかかる前は、干潮時を見計らい、歩いて島に渡っていたという。
地殻変動で少しずつ形を変えていく島と、干潮時のみ姿を見せる一筋の砂の道−。地形が醸し出す神秘性は、人の心を引きつけたに違いない。


