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【断 横田由美子】“過去官僚”になるな

2008.8.29 03:22
このニュースのトピックスコラム・断

 真夏の夜のことだった。

 私は、何人かの霞が関官僚と暑気払いと称して酒を飲んでいた。そこに、20代の「過去官僚」が乱入してきた。外資系金融機関に転職して、現在は年収数千万円を稼いでいる。官僚時代と比較すれば、最低でも5〜6倍には増えただろう。あぜんとしたのは、彼の言動からまったく「公の精神」が感じられなかったことだった。

 「自分の幸福が一番大事。妻と子ども、おれの家族だけが幸せなら、他人や国はどうでもいいや」

 もはや民間人とはいえ、仮にも元公僕だ。私益のみを追求するその姿勢には私だけでなく居並ぶ「現在官僚」たちもまゆをひそめた。

 若手官僚の人材流出と質の低下が問題視されて久しい。人事院発表の統計では、国家公務員採用試験の申込者数は落ち込む一方だ。それなのに、役所を去る官僚の数は再び増えていると聞く。

 私はかねがね、こうした状況は日本の国力低下をもたらすと主張してきた。官僚は国のインフラを支えている。過度な官僚バッシングよりも、硬直した組織にメスを入れない限り、好転することはあり得ないとも思っていた。

 しかし、彼のような元官僚に少なからず会い、考えは変わった。もはや問題は、そうした段階にはないのではないか。若者全般の意識から公の精神が消えつつあるのではないか。それならば、今の若い官僚に滅私奉公を期待する方が無理ということになる。

 官僚システムの改革が急務であることは間違いない。だがむしろ、「公と私」に関する教育の方が急がれているのかもしれない。(ルポライター)

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