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【青雲の大和】(286)巨船が行く (1/2ページ)
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雄君(おきみ)の話では、難波(なにわ)で重臣たちが戦(いく)さだ、戦さだと騒いでいたという。宗主国大和の意にしたがわない新羅(しらぎ)に対する、いわば主戦論である。
これを秦(はた)は新羅の使者、知万(ちま)への脅しに使おうとした。
「一つうかがうが、いま乗っているこの船、これほど大がかりな巨船を、あなたがた新羅人はみたことがあるか」
「いや、いや、おどろきましたね。二艘で三百人は乗れるというじゃありませんか。きっとこれは、大唐に造ってもらったにちがいないと思いましたな」
知万は正直にいった。
「ではなぜ、わが朝廷はこの巨船を二艘、筑紫(つくし)の海にまわしてきたか、わかるか」
「知りませんな。この豪勢な船で、われわれを送りかえしてくださるということですかな」
「ばかをいってはいけない、汝(いまし)らはわずか十人ではないか。そこらの小舟でじゅうぶんである。つまり難波の朝廷はわれわれに兵をつけ、二艘の巨船で爾国(じこく)新羅を攻めたて、威嚇(いかく)せよと命じてきたのだ」
内臣(ないしん)鎌足(かまたり)の具体的な指示はとどいていない。しかし、重臣たちが主戦論でわきかえっているとすれば、それをふくめて、いずれ指令してくるかもしれないのである。
「兵はみてのとおり、いまのところ二十人に抑えてある。しかし、さらに新規の徴兵がどんどん行われており、われわれが新羅のどこかの島を拠点にして援軍を要請するなら、ただちに兵が送られてくることになっている」
もし中大兄皇子(なかのおおえのおうじ)と鎌足が決断すれば、そのようなことはすぐにも可能になるという意味では、これもたんなる脅しではない。
秦のことばに頬をこわばらせて、耳をかたむけていた知万は、不逞(ふてい)な作り笑いをうかべていった。