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【青雲の大和】(286)巨船が行く (1/2ページ)

2008.8.23 04:59
このニュースのトピックス青雲の大和

 雄君(おきみ)の話では、難波(なにわ)で重臣たちが戦(いく)さだ、戦さだと騒いでいたという。宗主国大和の意にしたがわない新羅(しらぎ)に対する、いわば主戦論である。

 これを秦(はた)は新羅の使者、知万(ちま)への脅しに使おうとした。

「一つうかがうが、いま乗っているこの船、これほど大がかりな巨船を、あなたがた新羅人はみたことがあるか」

「いや、いや、おどろきましたね。二艘で三百人は乗れるというじゃありませんか。きっとこれは、大唐に造ってもらったにちがいないと思いましたな」

 知万は正直にいった。

「ではなぜ、わが朝廷はこの巨船を二艘、筑紫(つくし)の海にまわしてきたか、わかるか」

「知りませんな。この豪勢な船で、われわれを送りかえしてくださるということですかな」

「ばかをいってはいけない、汝(いまし)らはわずか十人ではないか。そこらの小舟でじゅうぶんである。つまり難波の朝廷はわれわれに兵をつけ、二艘の巨船で爾国(じこく)新羅を攻めたて、威嚇(いかく)せよと命じてきたのだ」

 内臣(ないしん)鎌足(かまたり)の具体的な指示はとどいていない。しかし、重臣たちが主戦論でわきかえっているとすれば、それをふくめて、いずれ指令してくるかもしれないのである。

「兵はみてのとおり、いまのところ二十人に抑えてある。しかし、さらに新規の徴兵がどんどん行われており、われわれが新羅のどこかの島を拠点にして援軍を要請するなら、ただちに兵が送られてくることになっている」

 もし中大兄皇子(なかのおおえのおうじ)と鎌足が決断すれば、そのようなことはすぐにも可能になるという意味では、これもたんなる脅しではない。

 秦のことばに頬をこわばらせて、耳をかたむけていた知万は、不逞(ふてい)な作り笑いをうかべていった。

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