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【断 久坂部羊】かかりつけ医への不安
このニュースのトピックス:コラム・断
後期高齢者医療制度の目的のひとつに、かかりつけ医の定着がある。高齢者はさまざまな病気で複数の医療機関を受診し、検査や投薬が重複する可能性があるので、それを防ぐためである。
かかりつけ医を決めると、75歳以上の患者は、月々600円の負担で、13種類の慢性病に関して、必要な検査を何度でも受けられる。
その意味では期待できるが、ひとつ大きな問題がひそんでいる。開業医がすべて「かかりつけ医」として十分な能力を備えているのかという問題だ。
かかりつけ医の役目は、病気を広くカバーすることである。しかし、今の開業医は、勤務医時代に狭い専門分野の患者しか診ていない者が多い。たとえば、呼吸器内科の医師は、喘息(ぜんそく)や肺気腫には詳しいが、狭心症や肝炎などはあまり診ていない。それが開業したからといって、内科全般の患者を的確に診療できるものだろうか。
日本では昔から、開業医を「町医者」と称して、専門医より一段低く見る風潮がある。しかし、あらゆる疾患を広く診療する能力は、いわば「総合医」とでもいうべき立派な専門分野である。そのトレーニングをまるで受けずに開業した医師たちに、かかりつけ医が務まるのだろうか。
世間の人は、医師ならどの病気もきちんと診断できると思っているかもしれないが、それは必ずしも正しくない。
かかりつけ医の定着を図る前に必要なのは、まずかかりつけ医に足る「総合医」の養成ではないか。(医師・作家)