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【人、瞬間(ひととき)】あの本 作家・川上未映子さん(31)(上) (1/3ページ)
■「診断」は正しかった
「ちょうど1年前、そこの席で芥川賞落選の連絡を受けて、そのあと韓国料理のお店に行って…」。大きな瞳が隣のテーブルから窓の外へとくるくる動いた。
新宿の街を見渡せる居心地のよいカフェ。会ったのは、第139回芥川賞選考会が行われた7月15日、楊逸の受賞が決まる直前だった。1年前、タイトルだけでのけぞりそうな小説『わたくし率 イン歯ー、または世界』で芥川賞にノミネートされ、落選。しかし、「文筆歌手」という風変わりな肩書と関西弁の文体は世間の記憶に残り、半年後『乳と卵』で第138回芥川賞を受賞した。
「賞をもらって半年でエッセーを50〜60本、創作を5、6本? インタビューや対談もいっぱいやったなあ」。手帳をのぞくと、年明けからずっと、マス目に空白はない。「もう、吐くわ」。言いながら、過ぎたマスに力強い×印を書く。「芥川賞の賞味期限は次が決まるまでの半年間」と話したこともあったが、いまも長編を抱え、家に帰れない日々が続く。秋ぐらいのページをじっと見つめながら「いま入ってる仕事以外絶対入れへんねん。ずーっと寝たんねん」とつぶやく。
そんな日々のなかで、家に送られてきたり、まとめ買いしたりした本に目を通す間がないのが、つらいという。
「これまでずっと、家には読んだ本しかなかってん。『積読(つんどく)』っていう言葉だって、28か29(歳)で初めて知った。知らん本が家に増えたのは、なんか苦しいし、重いなあ」
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